ママ向けイベントで子育て
応援地域に密着した口コミ戦略
名古屋駅のシンボルとして知られ、待ち合わせスポットなどとして地元に親しまれている、身長6メートルの巨大マネキン「ナナちゃん人形」。2013年10月、ナナちゃんが背中に「安産祈願」の大きなお守りを背負い、抱っこひもで赤ちゃんを抱いたママの姿に変身した。これは、医療法人葵鐘会(愛称ベルネット)の9番目となる産婦人科「キャッスルベルクリニック」の開院PRのキャンペーンだ。
葵鐘会では「ママさん」をターゲットに、こうしたユニークなキャンペーンやイベントを積極的に実施している。その理由を葵鐘会理事でマーケティング責任者 CMOの永友一成氏はこう語る。
「日本の女性が生涯に産む子どもの数は1.43人。ですが、当クリニックでは半数以上が経産婦(出産経験のある女性)で2人目、3人目を出産されます。1.43という数字はあくまで平均です。産む人はたくさん産むし、産まない人は1人も産まない。その平均が1.43人になるのではないか。であれば、ターゲットとして絞りやすいママさんにフォーカスした方がいいと考えたのです」。
イベントは、ナゴヤドームで開催される中日新聞主催の「ハッピーママフェスタ」や日本財団の「ママまつり」などの大イベントへの協賛から、クリニックで実施する小規模イベントまで様々。「費用対効果で考えると、たった3日間のイベントへの協賛は採算が合いませんが、『ハッピーママフェスタ』の冠でミニイベントをたくさん行うための地域戦略と捉えています。冠があると新聞に取り上げられやすくなるんです」。
各クリニックでもヨガやベビーケアなど豊富なメニューで産後ケアを行う。核家族化で、今は1人で子育てするママが多い。教室は同じ子育てをする仲間と横のつながりを結ぶ大切な場でもある。
イベントでの体験をSNSで発信するママも多く、情報拡散の勢いに驚くという。「当院のアンケートで、ママさんたちが先輩ママの意見を大切にする傾向にあることが分かっています。実際に妊娠した時に先輩ママさんから、『ベルネットで産んだらよかったよ』と聞いて来院する方もいらっしゃいます」。
出産体験をより印象深く
カンヌでグランプリも受賞
永友氏が一貫して訴求してきたのは葵鐘会の医療品質の高さだ。出産は命に危険がおよぶ可能性のある大事。だが、患者にその感覚はあまりなく、医療品質で訴求しても理解してもらえず集客にもつながりにくいという。
ストレートな訴求では、女性に響きにくい。そこで、出産体験をより印象深いものにし、母子の絆をより強固にできないものかと考えた…