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映画監督・山崎貴が語る「言葉にできない何かが人の心を動かす」

山崎貴さん

『ALWAYS 三丁目の夕日』『永遠の0』『friends もののけ島のナキ』など、高度なVFXで数々の映画に命を吹き込んできた映画監督の山崎貴さん。最新作は、八木竜一監督と共に共同監督・脚本を手掛けた『STAND BY ME ドラえもん』だ。世界的なVFXの名手が、この映画で挑戦したこととは。

映画監督 山崎貴(やまざき・たかし)
1964年長野県生まれ。CGによる高度なビジュアルを駆使した映像表現・VFXの第一人者。86年白組入社。2000年『ジュブナイル』で映画監督デビュー。主な作品に『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズ、『SPACE BATTLE SHIPヤマト』、『friends もののけ島のナキ』、『永遠の0』がある。今冬『寄生獣』が公開。

懐かしさと新しさのバランス

『STAND BY ME ドラえもん』(2014)
©2014「STAND BY ME ドラえもん」製作委員会
街並みやのび太の部屋はミニチュア模型を制作し、実写画像とCGキャラクターを融合させた。ひみつ道具は、原作のテイストを保ちつつ3DCG版らしくブラッシュアップ。映画の見どころのひとつになっている。

国民的人気マンガ「ドラえもん」初の3DCG映画『STAND BY ME ドラえもん』が生まれたきっかけは、山崎貴監督の元にプロデューサーが持ち込んだ「国産『トイ・ストーリー』が作りたい。それには『ドラえもん』しかない」というアイデアだったという。

「最初は正直、厳しいと思いました」と山崎監督は打ち明ける。「毎年春に2Dのアニメ映画が公開されていて、テレビアニメも毎週放送されて成功していましたから。そこに3DCGで参入するのは難しいのではないかと」。しかし、プロデューサー陣の熱意に押される形でプロットを考え、想いをつづった手紙と共に藤子プロに打診した。「僕のような大人にとって、ドラえもんは、もはやそこにいて当たり前の存在です。でも、ドラえもんは、いなくなることもある。あたりまえの存在がいなくなるとしたら、それほど悲しいことはない。もし、3DCG化を許してもらえるなら、そういう存在こそが実は大切なんだということに気づかせてくれる映画にしたい、と書いたんです」。返事は、予想に反してOK。ここから、3年間にわたる制作がスタートした。

言うまでもなく、ドラえもんは往年のファンがついているキャラクターである。今回の映画は大人がターゲットであるため、大人のファンにも愛される映画にしたかった。そのため「懐かしさと新しさのバランス」に苦労したと、山崎監督は話す。

原作のイメージを壊すことなく、かつ、3DCGでどれだけ“お土産”(付加価値)を加えることができるのか。そのために、まず、物語は「ハレ」ではなく「ケ」の世界中心にしようと考えた。「3DCG」が新しい要素としてある分、話は日常を舞台にすることでバランスを取った。物語は原作「ドラえもん」の中から7つのエピソードを選び出し、構成した。名作中の名作と言われている「未来の国からはるばると」と「さようなら、ドラえもん」を物語の軸に据え、「ドラえもんが来て帰る話」になるように、膨大な原作の中からふさわしいエピソードをピックアップしていったという。

「3DCGだからこそ、物語は大事なんです。3DCG化されたキャラクターへの拒絶感を崩すのは大変なことです。でも自分には、昔『E.T.』を見た時に、最初ちょっと嫌だなと思ったのに、話に巻き込まれたら5分で慣れてしまったという体験があって。『アバター』も慣れないと思ったのに、最後は愛おしくなっている。それが“物語の腕力”。だから、物語でまず頑張ることが大事だと思ったんです」。

逆に、3DCGによる“お土産”として意識したのは ...

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