ネスレコンフェクショナリー・マーケティング本部長時代に「キットカット」受験生応援キャンペーンを成功させるなど、マーケターとしての実績を重ね、現職に就任した高岡浩三氏。お客様にとっての価値を最優先で考える、マーケティングが中心にある企業経営とは。

高岡 浩三(たかおか・こうぞう)
ネスレ日本 代表取締役社長兼CEO。1983年、神戸大学経営学部卒業後、ネスレ日本入社。各種ブランドマネジャーなどを経て2005年、ネスレコンフェクショナリー代表取締役社長に就任、2010年11月より現職。利益率の低い日本の食品業界において、新しいビジネスモデルを追求しながら超高収益企業の土台をつくる。
新興国モデルの呪縛が失われた20年の要因
バブルが崩壊してからの失われた20年、日本はGDPが増えることもなく、経済大国として米国に次ぐ2位のポジションも中国に譲り、さらには長期にわたるデフレを経験し、食品業界にとっても厳しい環境が続いてきました。日本の政治、そして経済のモデルは戦後の高度経済成長期に成功体験を築いてきた「新興国」のモデルと言えます。先進国の仲間入りをし、経済成長がピークに達したバブル経済下で、新興国から先進国モデルへと転換を図るべきでしたが、それができなかったことが失われた20年の要因です。
今年9月末には、フィリップ・コトラー教授が2010年に設立したワールドマーケティングサミットが初めて日本で開催されます。予定地だったタイの政情不安があり、急遽開催が決まったものです。コトラー教授は新興国にこそ、マーケティングが必要であるという考えのもと、これまではミャンマーをはじめとする新興国で開催をしてきたそうですが、私は日本のような先進国こそマーケティングに課題を抱えている、先進国にこそ新しいマーケティングが必要とされているのだという話をしました。そこで今回はいかに先進国型のマーケティングモデルへの転身を図るかというテーマを発信していく予定です。
マーケティング視点を人事制度にも
マーケティングの概念は進化を続けていますが、日本の企業も例えば ...