競争戦略の分野で、平明かつユニークな語り口が注目を集める楠木建教授。「ストーリーとしての競争戦略」を提唱するその研究内容と、そこから導き出されるマーケティングの心得を聞いた。
戦略の神髄は「聞いていて面白い戦略」。多数の事例と共に、競争優位の論理を「ストーリー」の観点から、読み解く。
「当たり前のことしか言ってないじゃないかって、よく言われるんですけどね」と快活に語る。研究テーマを書名に掲げた主著『ストーリーとしての競争戦略』以降、誰もがビジネスの場で直面し、しかし立ち止まっては考えないような事柄を、明晰に言語化するスタイルを貫いている。冒頭の言葉は正当な評価だと、楠木教授は笑う。
優れた戦略は魅力的なストーリーだ
「優れた戦略とは何か。それは『聞いていて面白い戦略』です」。どのような製品・サービスを、どのようなターゲットに、どのように訴求するか。それらを単に羅列するのでは、優れた戦略にはなり得ない。ミッションが何を素材に、どう展開して、どんな成果をもたらすか。個々の因果関係が明白で、構想者が戦略を語ることに夢中になり、聞き手にも身を乗り出させるようなストーリーとして成立しているもの。それが優れた戦略だ。
無論、ストーリーを構成する要素にも吟味は必要だ。「優れた戦略に飛び道具はありません。『ビッグデータ』のような、その時々の話題のテーマはつい手に取りたくなるものですが、それが優れた戦略を約束するわけではありません」。
競争に勝ち残るための視点
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