広告のメッセージを深掘りすると見えてくる社会の問題 「歴史」というオブラートで包み、新たな視点を読者に与える
『童の神』『八本目の槍』や直木賞受賞作品『塞王の楯』などの作品で人気の歴史小説家、今村翔吾さん。2021年から書店経営も行い、2024年4月には、シェア型書店「ほんまる」もオープンした。「広告はネタの宝庫」として着想を得ることもあると言い、自らも広告を手掛けてみたいと話す今村さんに、広告のクリエイティブに期待することについて聞いた。
私の広告観
花屋なのに“花”を置かない─そんな一風変わったお店を営んでいるフラワーアーティストの東信さん。店舗でのオーダーメイドの商品制作だけでなく、アート作品の創作、企業とのコラボレーション活動など、花の魅力を最大限に引き出す幅広い活動を行っている。これらの活動を掘り下げていくと、人に花を贈ることと、企業を伝えるためのコミュニケーションの2つには“共通項”があることに気づく。
フラワーアーティスト 東信さん(あずま・まこと)
1976年生まれ。2001年椎木俊介と共に、注文に合わせて花材を仕入れて制作するオートクチュールの花屋「JARDINS des FLEURS」を銀座に設ける(現在は東京・南青山)。2005年頃よりニューヨークでの初個展を皮切りに、国内外の美術館やギャラリー等で作品を発表している。
「花のない花屋」というコンセプトのお店が南青山にある。世界中から注目を集めるフラワーアーティストの東信さんが営む「ジャルダン・デ・フルール」だ。ここには花は一切置かれていない。お客さんからの注文をもとに、オーダーメイドで商品を制作する、オートクチュールの花屋なのである。
異色の花屋をつくった理由を、東さんは次のように語る。「僕は22歳のとき、麻布十番にあるスーパーマーケット内の花屋で働いていました。そこで交わされるお客さんとの会話は、『値段はどのくらいか』『何色系にするか』の2つぐらい。そこに大きな違和感がありました。お客さんはもっと花に込める想いがあるはずだし、つくり手側も、誰に何のために贈る花か、さらには受け取る人の性格なども聞き取らなければ、本当に喜んでもらえる花はつくれないのではないかと。そう感じたのが自分で花屋を作ったきっかけです」。
東さんは「お客さんと花とつくり手の一番美しい三角形をつくりたい」という。その実現のために、お客さんに対して徹底的にヒアリングをする。その項目は驚くほど細かい。花の用途、贈り手と受け取る人の年齢、性別、好きな色、イメージ、渡すタイミングやシチュエーション、さらには受け取る人が花を飾る場所まで掘り下げていく。
「何よりもまず『なぜ花を贈るのか』をお客さんに聞くことが…