映像プロデューサーとして毎年カンヌライオンズに参加、フィルム部門の動向に注目してきたキラメキの石井義樹氏。今年のフィルム部門に見る傾向を解説してもらった。
Volvo Trucks - The Epic Split feat. Van Damme (Live Test 6)
ボルボトラック「The Epic Split」
ジャン=クロード・ヴァン・ダムが見事な180度開脚を披露することで話題に。
A Harvey Nichols Christmas 2013 -- Sorry, I Spent It On Myself
ハーヴェイ・ニコルズ「Sorry, I Spent it On Myself」
家族や恋人へ渡したプレゼントの中身は粗品ばかり?英国の老舗百貨店のクリスマスキャンペーン。
対照的な2つのフィルムグランプリ
2014年カンヌライオンズでは、フィルムのグランプリは2つあった。ひとつはボルボトラックの「The Epic Split」。昨年からWebやSNS上で話題になっているオンライン動画だ。もう1つは、ハーヴェイ・ニコルズの「Sorry, I Spent it On Myself(自分のプレゼントに使っちゃってごめんなさい)」。イギリスの老舗高級百貨店が仕掛けた2013年のクリスマスキャンペーンである。クリスマスのプレゼントを家族や恋人に渡すのだが、その中身はつまようじや水栓など、およそプレゼントらしくない安物(粗品?)ばかり。店頭でもこうした低価格のものをラインナップしたギフトコレクションを発売、見事完売した。
一昨年あたりから、フィルム単体での強さ(どれだけ面白いテレビCMを作ったのか、どれだけ面白くてシェアされるオンライン動画を作ったのか)以外に、フィルムを含めたキャンペーン展開の設計という評価軸が加わっていると感じる。今年で言えば、フィルム単体ではボルボトラック、キャンペーン設計でハーヴェイ・ニコルズと言えるだろう。ハーヴェイ・ニコルズはキャンペーン全体を体現する動画であるという意味で、とても“今っぽい”広告であり、2014年グランプリであるという意味がよく分かる。
普遍的なテーマほど演出力が左右する
Old Spice「Mom」
Old Spiceのボディスプレーを使ってモテモテになった息子。その脇には、恨めしそうな表情の母親が…。
HBO Go「Appreciation」
家のリビングでアダルトビデオを見ている息子。タイミングよく母親が登場し、気まずい雰囲気に。
「家族」「子ども」は従来から世界で通用する鉄板ネタだが…