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広告を「読む」。

名作 広告を読む コピーライター山本高史

山本高史

広告を「読む」と「年齢を重ねるということ」が見えてくる。広告は消耗しない。積み重なる。

宝島社(1998年)コピーライター 前田知巳

不思議なこともあるものだ。これだけ言葉が使い果たされているような広告の世界で、高齢者に呼びかける言葉に困っている。その模範解答は、未だ誰からも提示されていない。

ある商品を担当した。それは特に60歳代後半~70歳代、つまり高齢者に向けたもので、当然のことながら彼らをコミュニケーションターゲットとし、彼らに対してベネフィットを約束し、彼らにとって好ましい表現を構築することになる。ここまではいい。通常の作業だ。しかしいざ、例えばそのTVCFのナレーションを書こうとしたとたん、予期せぬ壁に突き当たる。「楽しそうな高齢者が好きだ(仮)」ということを書きたいとして、しかし「高齢者」と素直に書くわけにはいかない。「おじいさん」、「おばあさん」とは表現できないだろう。顔をしかめる彼らの姿もくっきりと思い描ける。15歳男子を「少年たち」と呼びかけたところで違和感はないが、「高齢者」向けの商品を広告するのに、通例その人たちを指す言葉が使えない。相手が「中年」ならば「中年」でいいし、文脈に応じて「大黒柱」、「課長」、「パパ」と書いても事足りる。

高齢者のエリアには、どうやら言葉が少ない。ならばと、高齢者に「あなた」という年齢不問の言葉を試そうとすれば(例えば『あなたが楽しそうならば、ぼくらは次に進める』)、その二人称はもちろん正しい語法なのだが、この言葉にも少なからぬためらいを感じる。年長者に対して「あなた」呼ばわりは、不遜な印象を与えかねないのではないか、と恐れる。年少者を「キミたち」呼ばわりすることは平気なのに、である。

ここで二つの仮説に行きつく。ひとつは ...

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「わんぱくでもいい、たくましく育ってほしい」(丸大食品、1970年代)

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