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作家・長嶋有さん「発せられた言葉は残る」

長嶋有(作家)

小説やエッセイ、俳句などエネルギッシュな文筆活動を続ける長嶋有さん。昨年末に出した4年ぶりの長編小説は、ツイッターの中の世界を舞台にゆるやかに交わる現代の人間模様を描き出し、「静かな意欲作」と言われる。その独特の鋭い観察眼は、企業の広告にも注がれている。

作家 長嶋有(ながしま・ゆう)
1972年生まれ。2001年「サイドカーに犬」で第92回文學界新人賞を受賞してデビュー。翌年「猛スピードで母は」で第126回芥川賞受賞。2007年、『夕子ちゃんの近道』で第1回大江健三郎賞受賞。他の著作に『佐渡の三人』『いろんな気持ちが本当の気持ち』『安全な妄想』『祝福』『ねたあとに』、漫画『フキンシンちゃん』などがある。「ブルボン小林」名義でコラム・エッセイストとしても活躍。

ツイッターの中の人間関係をスケッチしたような小説

小説『問いのない答え』の中で、主人公たちは言葉遊びを通じてつながっている。ツイッター上で誰かが“一部だけ明らかにされた質問文”を回す。出題の全容が分からないまま、参加者たちは思い思いの回答を返す。問いかけられた質問やそれに対する答えが、タイムラインを覗いたそれぞれの人の中の何かにひっかかり、小さな感情のさざ波をあちこちで生んでいく...。

ツイッターというバーチャル空間の中で、細切れなコミュニケーションが突然立ち上がっては消え、最後まで明確な山場や区切れのないまま進んで行く。章立ての扉も見出しもない本の作りが、その世界観をさらに強調する。ツイッター上のコミュニケーションをそのまま紙上に体現したような小説で、「静かな意欲作」と言われるゆえんだ。

実は、この小説は作家の長嶋有さんの実体験を元に書かれている。2011年の震災後、何をするにも気が散ってしまうと感じ、やむをえず言葉遊びを始めた。参加者は次第に増え、長嶋さんを中心にした一つのコミュニティとなった。あるとき、長嶋さんは彼らが登場する小説を書いてはどうかと思いつく。特に長編小説にするつもりはなかったが、1話発表するたびに、ツイッターで直に反応が戻ってくる。それが面白くて、ついに一冊の長編小説になったのだという。

要約しにくいものを書きたい

文字によるスケッチのようなこの小説を、一言で要約するのは難しい。長嶋さんはこれまで ...

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