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広告を「読む」。

山本高史 広告を「読む」と、「男」が見えてくる。

山本高史

広告を「読む」と「時代/ 社会/人間」が見えてくる。広告は消耗しない。積み重なる。

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サッポロビール「男は黙ってサッポロビール」 1970年

サッポロビールというブランドには、当時女性的なイメージがあったらしい。だから何としても男に飲ませたかった。企画の当初は「あそこでサッポロビールを飲んでいるのは、三船敏郎ではないか。」というコピーだったそうだ。「黙って」という言葉はNHKの調査から拾った。そこで挙げられていた男の魅力の一つに「寡黙」があったからだ。その寡黙さは徹底していた。ボディコピーがない!瓶(商品)がない!社名ロゴがない!「男は黙ってサッポロビール」は、そうして出来上がった。

「広告を読めば、そのバックグラウンドに肥沃に広がる時代/社会/人間が見えてくる」と主張するのならば、取材は反則なのかもしれない。その当事者に話を聞けば、広告を前に想像力を駆使しなくても「時代/社会/人間」に辿り着いたのも同然だからだ。ただ「男は黙って」に関して言うと、「広告を読む」などともったいぶらなくても、その広告の意味せんとするところは、おおよそは誤解のしようがないのではないか、(じゃあまあ、まずお話を聞いちゃうか)と思っていた。事実「賞味期限が切れた広告は、本来の使命的には無価値である」と喧伝するぼくの目の前で、いまだに「男」はすっくと立っている。秋山晶さんが言うには「一般論を書くんだよ」ということらしい。ここで言う一般論とは本質のようなことで、本稿においては「人間=変わりにくいもの」がそれにあたる。沈黙は金、である。剛毅木訥が仁に近いのだ。ついでに言うと、ビールを飲んでいる最中は誰でも黙る。つまり「男は黙ってサッポロビール」なのである。寡黙なコピーの雄弁なことよ。沈黙と合わせて、金銀独占である。

「おおよそ」に関しては想定通りだった。あることを見落としていた。

1970年の記憶はない。まだ小学生だった。父親の記憶はある。家族で茶の間のテーブルを囲み、父親は無口にビールを飲んで …

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「わんぱくでもいい、たくましく育ってほしい」(丸大食品、1970年代)

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