P&Gマーケティング一筋21年。えとじやの岡本晋介氏が14年間マーケティングコミュニケーションの社内コンサルタントに携わっていた経験からマーケターの評価、人材育成について語る。
マーケティングを経験しないと経営者(GM、CEO)になれない
近年、日本企業や大学においてCMO(Chief Marketing Officer)育成の動きが増えてきている。グローバル化を目指す日本企業にとってマーケティングを経営の中心に据えなければ、と危惧するのはよくわかる。岡本氏が在籍していたP&Gは、業種・業界を超えたマーケティングビジネスのパイオニア的存在である。経営の中心にはいつもマーケティングがあり、豊富な経験とノウハウを保有するところから「マーケティング大学」とも呼ばれている。コカ・コーラ、Disney Company、E-Bay、GE、GM、マイクロソフトなど名だたるグローバルビジネスカンパニーのCEO(リーダー)を、過去・現在にわたり輩出してきた。
P&Gでは、マーケティング部門を経験しなければ基本的にGMさらにはCEOなど、経営を担う役職に就くことができない。言うなれば、マーケティング部門は経営者を育てるための養成所。日本企業ではキャリアパスでさまざまな部署を経験させる制度があるが、部門別採用のP&Gでは、採用の段階から、すでに将来の経営者を採用・育成するつもりで選んでいる。もちろん全員はなれないが、最後まで生き残る人材に期待するのはCMOではなくCEO(あるいはGM)である。経営トップに立てないのであれば辞めるか、技術職という観点でマーケティングに特化した専門家になるか、のいずれかである。