広告マーケティングの専門メディア

           

ニュースから見る広告の近未来

ビッグデータが支えたAT&Tの広告クリエイティブ

織田浩一

当社も新規広告・メディアテクノロジー企業と日本企業の提携のサポートをしているが、そのスピード感がますます上がっている感じ。シリコンバレーでスタートアップ企業に会うだけではなく、インキュベーターとの提携や新しいシーズの発掘などもある。市場の成長段階のミスマッチが課題になることも多いが、日本企業も積極的になっている。

ビッグデータが支えたAT&Tの広告クリエイティブ

AT&Tの市場リサーチ&分析ディレクターであるGreg Pharo氏は、ニューヨークで開催されたマーケティング調査イベント「Re:Think 2014」で、綿密な分析をもとに制作した同社CMが、推定約5000万ドルの追加売上を生み出したと発表した。

BBDOが担当し、記録的な成功を収めた、この「It's Not Complicated」キャンペーンは、コメディアンのBeckBennettと子供たちが教室で語りあう内容だ。Pharo氏と同社のシニアデータサイエンティストは、マーケティングミックスの分析データではなく、実際にどのような広告に効果があるかを調べる方針に転換。3年間にわたり40種類のコピーテストと、自社と競合他社の370広告を細かく分析し、影響力のあるコンテンツの傾向を特定した。AT&Tの総売上の25%はメディア広告による販促の効果であり、うち10%はテレビ広告のみの効果とPharo氏は述べており、同社の試みは大きく報われたとしている。

■ソース:「アドエイジ」3月25日
How Big Data Shapes AT&T's Advertising Creative

セレブのツイートを「People.com」が直接掲載

「People」誌は新興企業のWhoSayと提携し、セレブのつぶやきが「People.com」に直接ツイートされる機能である「WhoSay.com」を発表した。

俳優やアーティストなどの有名人からツイートを募集し、それらを分類してリアルタイムに公開するウェブサイトを運営している。「People」誌はその一部を共有して自社ウェブサイトに掲載できるようになる。ツイートを流すセレブに関しては同誌編集部が厳選。現在、Maggie GyllenhaalやコメディアンのJim Gaffiganらの画像やつぶやきがフィードされている。同誌では、それらのつぶやきがトップのニュース記事や特集記事の起点になる可能性も見込んでいる。

両者の連携は、プラットフォームの提供だけでなく、互いのコンテンツをウェブサイトや雑誌で使用できるほか、「Celebrities Unfiltered」セクションにはディスプレイ広告が掲載され、その利益も共有する。

■ソース:「アドエイジ」3月26日
Celebs Now Publishing Tweets and More Directly to People.com

ネイティブ広告がディスプレイ広告の売上を補強

ネイティブ広告はバナー広告の売上を妨害すると思われがちだが、eMarketerは、ネイティブ広告が同時にディスプレイ広告の売上を増強していると報告した。パブリッシャーがネイティブ広告目当ての顧客に、ディスプレイやビデオなど他の広告製品も勧め、パッケージとして販売する場合が多いからだ。

Huffington Post Media Groupのネイティブ広告およびHuffPost Partner Studio のディレクター、Tessa Gould氏は、eMarketerに対して「ネイティブ広告が取引の当初の交渉ごとであったとしても他の広告製品を購入することになる」と述べている。Forbesも昨年の秋、広告収益の30%はBrand Voice提供記事を含む広告パッケージによると予測していた。eMarketerによれば、ネイティブ広告を含むスポンサードコンテンツへの今年の支出額は、前年比20.5%増の22億9000万ドルになる見込み。2017年には32億ドルに達するとしている。

■ソース:「アドエイジ」3月21日
Native Advertising Can Actually Boost Display-Ad Sales, Report Says

ストリーミングが影響 有料テレビ契約数が初の減少に

Comcast、DirecTV、Verizon Communicationsなどに代表される米国のテレビ業界では2013年のケーブル、衛星、ファイバーテレビによる従来型有料テレビの視聴契約数が25万1000減少したと調査会社のSNLKaganが発表した。より安価なコンテンツ視聴の手段として、オンラインストリーミングサービスに移行していることが原因だ。通年で減少を記録したのは初めてのことだという。

衛星とテレコミュニケーションのプロバイダーはユーザー数を増やしているが、ケーブル部門の低減を補うことはできていない。衛星部門では17万件、ファイバーケーブルを利用した電話会社のサービスは160万件、それぞれ契約数を伸ばした一方で、ケーブル部門では約200万件にのぼる減少だった。SNL Kaganは、「業界ウォッチャーの間では、四半期の時期的な減少が習慣化しており、年間減少は、経済の徐々な回復に反して、長期的な降下傾向を示している」と述べている。

■ソース:「アドエイジ」3月19日
Pay-TV Subscriptions Fall for First Time as Streaming Gains

FacebookがGoogleのモバイル広告シェアに迫る

eMarketerは今年3月、世界的なモバイル広告支出が2013年に105%増を記録、今年中に315億ドルに達するペースで伸びているという推算を発表した。トップのシェアを獲得しているのはGoogleとFacebookで、両社で2013年のモバイル広告総収益の67%(Google 49.3%、Facebook17.5%)を占め、2012年の58%から伸びている。またモバイル広告費は著しい速度で増大しており、eMaketerが4カ月前に発表した予想額18億ドルの2倍に上っている。この急増は、Facebookが2013年、モバイル広告事業参入わずか2年目にして、純収益シェアを前年比で3倍増あまりの18%まで伸ばしたことが主な理由だ。

2014年の予想では、Facebookはモバイル広告の約22%を占め、収益は68億2000万ドルになると見込まれている。一方でGoogleも、シェアは減少したものの、2014年の予想も46.8%と大幅なリードを守っている状況だ。

■ソース:「アドエイジ」3月19日
Facebook Eats Away At Google's Share Of Mobile Ad Pie

ネスレがシリコンバレーで新興企業と接点を求める

ネスレは、およそ1年前からシリコンバレーでデジタルイノベーション部門のオフィスをひっそりと運営していた。最近、これが新興企業とより近しい接点を持つことを目的としたプロジェクトであることを公表しはじめた。社員はわずか2名と、ごく小規模かつ身軽な構成だが、他にUniversal McCannが管理する、新興企業のためのオフィスビル「マッドバレー」にもスペースを持つ。

同社は、製品の栄養価や健康、環境に関する情報をより豊富に発信する方法として、デジタルを重要視している。「Beyond the Label」というグローバルプログラムでは、製品のパッケージにQRコードを表示。消費者はウェブサイトへ飛び、健康に関する情報やレシピ、製造に費やされたエネルギーや水の量を見ることができる。「我々は新たな透明性の時代にいる。消費者は製品の詳細にかつてなく敏感で、情報を強く求めている」と同社の担当は述べている。

■ソース:「アドエイジ」3月13日
Nestle Cozies Up to Startups at Silicon Valley Outpost

織田浩一氏(おりた・こういち)

デジタルメディアストラテジーズ社代表、アドイノベーター編集長。米シアトルを拠点とし、欧米の新広告手法・メディアテクノロジー・IT調査・コンサルティングサービスを日本大手広告会社、WEB制作会社、総研などに提供。広告・メディア業界におけるR&D業務のサポートを行っている。オンライン、オフライン広告の近未来に関するブログ、メルマガを下記のアドレスにて公開している。
http://www.adinnovator.com

無料で読める『本日の記事』をメールでお届けいたします。
必要なメルマガをチェックするだけの簡単登録です。

お得なセットプランへの申込みはこちら

ニュースから見る広告の近未来 の記事一覧

ビッグデータが支えたAT&Tの広告クリエイティブ(この記事です)
P&Gの洗剤広告、スーパーボウルを捨てTwitterへ
カンヌライオンズ2014、新部門「製品デザイン」が追加に
米ユニリーバ「Dove」の動画、視聴回数で2013年の1位に輝く
政治キャンペーンで利用増、テレビCMのターゲティング配信
日産がOmnicom Groupと契約、専門チーム「Nissan United」を管理

おすすめの連載

特集・連載一覧をみる
宣伝会議Topへ戻る

無料で読める「本日の記事」を
メールでお届けします。

メールマガジンに登録する