日本は欧米に比べCMOの設置企業が少ない。グローバル化を進めるには、CMOの必要性が高まっているが、なかなか根付きにくいのが現状だ。ディッキーズ 日本法人副社長の松岡洋平氏とピップ 執行役員の水書邦之氏に日本企業が抱える課題について語っていただいた。

(左から)ディッキーズ 松岡洋介氏、ピップ 水書邦之氏。
水書▶ 日本企業の中枢にCMOを置くことの意義についてどうお考えですか?
松岡▶ 経営者の仕事は数字が第一、業績を上げることです。当然社員も全員が数字を達成するために邁進するわけですが、CMOの役割は、消費者が求めているものと、企業が目指すべきもの、この二つを因数分解して最適解を算出し、目指すべきゴールの道筋を照らすこと。そして、その方向性を最善のコミュニケーションで社内外に提案し、結果としてコストを抑え、数字を上げることだと思います。CMOが有効に機能すれば、ブランディングによる業績向上につながります。
水書▶ 私は、企業やブランドがグローバル化を推進するにあたり、必要な機能がCMOだと思います。ローカルやリージョンで進めているうちは、さほど必要ないでしょう。本拠地のマーケティングをそのまま維持・展開したのでは、おそらく国際競争で勝てない事態が起こり得る。それをグローバルな視点で統合的にシステム構築するのが、大きな役割だと思います。経営の根幹にマーケティングを機能させている企業に求められる役割だと思います。
松岡▶ CMOの機能が日本企業で根付きにくいのはなぜだと思いますか?
水書▶ 日本企業の多くは、営業・製品開発・技術のいずれかが経営の根幹にあり、マーケティング組織がそういう強い部門の下にぶら下がっていたり、分散して組織の中に組み込まれていたりする場合が多いのだと思います(CMOを設置している日本企業は時価総額上位300社の内わずか0.3%。米国は上位500社で62%が設置。経済産業省調べ)。
松岡▶ 確かにそこまで権限を持たされているマーケターは少ないですね。
水書▶ 外資系企業は、マーケティングを経営の中心に置き、ブランドの集合体がまさに事業体となって動くことが多いと思います。その全体を統括して管理できるのが強みではないでしょうか。マーケティングROIが大きいウェイトを占めるデジタル時代では、エリアやリージョンごとではなく、ブランド単体として投資対効率の最大化が図れるメリットは計り知れません。欧米と日本では、事業運営の成り立ちの違いがあると思います。