知のコミュニティをつくる
「探求と創発」の旗印の下、マーケティングの理論と実践との深いレベルでの交流を目指して2012年8月2日に設立された日本マーケティング学会。現代マーケティングの父として広く知られるフィリップ･コトラー氏（ノースウェスタン大学教授）や佐治信忠氏（サントリーホールディングス会長）、嶋口充輝氏（慶應義塾大学名誉教授）などが設立発起人として名を連ねるなど、設立前から注目されてきた。2013年3月の段階で約1,100人であった会員数は、2014年3月には約1,500人と、設立以来、順調に会員数を拡大してきているが、その成果は学会の活動の柱である「マーケティングカンファレンス」と「リサーチプロジェクト」における学会員の参画状況や研究成果の報告などからみてとることができる。
まずは第2回目となった「マーケティングカンファレンス2013」。『マーケティング戦略のグローバル・トレンド』を総合テーマに、昨年11月10日、早稲田大学早稲田キャンパス8号館で開かれた。基調講演とパネルディスカッションには、松井忠三氏（無印良品会長）との市井茂樹氏（ボストン コンサルティング グループ シニア・パートナー&マネージング・ディレクター）を招き、現在世界で幅広く実践され、議論されているマーケティング戦略とはどのようなもので、日本企業が成長するためにどのような示唆が得られるのか、パネリストや会場を訪れた学会員とともに議論した。これに加えて、学会の研究報告の場である「リサーチプロジェクトセッション」、伝統的な学会の報告スタイルを踏襲する「オーラルセッション」、ポスターボードに図表やキーワードを書き出して報告する「ポスターセッション」などの新しい研究発表の機会を設けたことが、学会員の積極的な参加に結びついている。会場にはマーケティングに携わる学者や研究者、実務家、ビジネススクール卒業生、マーケティングを学ぶ現役の学生などを中心に443人の学会員が集まり、白熱した議論が終日続いた。
「マーケティングカンファレンス2013」。マーケティングを学ぶ学者や研究者、現役の学生、学会員が集まり、白熱した議論が終日続いた。
もうひとつの活動の中心である、テーマを絞った研究会「リサーチプロジェクト」は、2013年度「地域活性化マーケティング」「価値共創型マーケティング」「クリエイティブ産業とイノベーション」「医療マーケティング」「ソーシャル・ビジネス」「東南アジア・マーケティング」「観光・地域マーケティング」「ブランド&コミュニケーション」の8テーマで開催された。それぞれのテーマについてゲストを招いて探求する研究会を随時開催しており、その模様はこのコラムでこれまで数回にわたり紹介してきた。プロジェクトの報告会の開催数は平均で3回、一番多いソーシャル・ビジネス研究会は6回にのぼるなど、学会員による自主的な運営で、大きな研究成果が生まれつつある。
さらに2014年度からは、「エフェクチュエーション研究会」「顧客価値創造型営業戦略研究会」「質的リサーチ研究会」「流通における知識共有問題研究会」「ユーザー・イノベーション研究会」「ソロモン流消費者行動分析研究会」の6プロジェクトが新たに加わることが計画されている。
企業経営だけでなく、行政や病院、学校など、あらゆる局面でマーケティングが語られはじめている中で、社会の要請に応えながらも、学会員が自主的にみんなで「知のコミュニティ」をつくりながら、これまで社会になかった新しい価値を生み出す機会となる。このような学会にすべく、2014年度も精力的な活動を続けていく。
文／日本マーケティング学会事務局
