ブランディング手法はどのような経済状況を背景に生まれ、進化してきたのか。その経緯を踏まえ、これからどうブランディングに取り組むべきかを解説する。
経済の3つのステージに伴うブランディングの変容
4月に控える消費税増税は、短期的には高価格商品の売上を高めるだろう。しかし一時的な消費熱が落ち着いた後、消費者はすぐ、「本当に必要なモノ、好きなモノは買うが、それ以外は買わない」と、より厳しく峻別するようになるはずだ。消費増税をきっかけに、おそらく来年後半から再来年にかけ、ブランディングも新たなステージに歩む時代が来ると考えられる。
なぜ、そうした変化が起きるのか。それは、経済状況変化にともなう、現在までのブランディングの多様化のプロセスを追っていくとわかりやすい。
経済指標に日本の一人あたりの名目GDP(国内総生産)の推移を挙げると、大きく3つのステージに分けることができる。ひとつめは、1991年のバブル崩壊までで、GDPが右肩上がりに伸びた時代。2つめは、バブル崩壊以後~2008年のリーマン・ショックあるいは東日本大震災までの低成長期。3つめは震災以降から現在だ。
この3つのステージに沿って、企業活動の力点を見てみよう。第1ステージの経済成長期では、企業の使命は他社よりも早く、商品を市場投入していくことにあった。スピード経営がもてはやされた時代で、この頃のブランディングは「ブランドイメージ」を広告や商品デザインで作るものとされた。イメージが効く広告主導の時代とも言える。
第2ステージ、長い低成長期はいわゆる「モノが売れない時代」で、多くの企業が顧客中心マーケティングの重要性に目を向けた。顧客を見よう、消費者の声を聞こう、と声高に叫ばれた時代だ。