デジタル空間におけるコミュニケーションをいかにとり、顧客との関係性を築いていくべきか――従来の広告メディアと異なる特徴に今、あらゆる企業がその方法論を模索し、対応の遅れが目立つ企業も少なくない。
ここでは、まず、あらゆる消費者行動がデジタル上に広がっている状況について、博報堂DYメディアパートナーズ メディア環境研究所所長の吉田弘氏と、博報堂 インタラクティブプラニング部長/ソーシャルメディアマーケティング部長の二見均氏が、「メディア定点調査」の結果も踏まえながら分析・考察した。
調査の結果からは、これまでスマートフォン保有率増加を牽引してきた若年層のみならず、50~60歳のシニア層に至るまで、行動範囲のデジタルシフトが急速に進んでいる現状が明らかになっている。今や、業種・業態を問わず、あらゆる企業が、ネット上においても顧客と効果的なコミュニケーションをとり、長期的視野に立ってエンゲージメントを築いていく必要に迫られている。
今後もますます進むと考えられる消費者行動のデジタルシフトに、企業はいかに対応すべきか。そのヒントにも言及する。
データから見える、断片化する可処分時間の今
生活者の日常と接点づくりの課題
博報堂DYメディアパートナーズメディア環境研究所は、生活者のメディア接触行動や、デジタルデバイス・サービスの利用動向の変化を捉える「メディア定点調査」を毎年実施しています。生活者の一日あたりのメディア接触時間は増え続けており、<東京地区>では2009年から2013年の5年間で約30分増加し353.1分となりました。接触時間全体に占める割合はテレビが151.5分と圧倒的に高いものの、数年間の動きをみると若干、減少傾向にあります。(図1)。
接触時間が伸びているメディアは、言うまでもなくインターネット(以下、ネット)。特にモバイルからのネット接続です。スマートフォン(以下、スマホ)を含むモバイルからのネット接続時間は、<東京地区>のデータをみると、昨年の40.4分から約10分増えて50.6分に。性別・年齢別では、女性のモバイルからのネット接続時間は15~19才で111.2分(102.3分)、20代で119.9分(67.8分)、30代で73.9分(45.3分)、40代で31.8分(34.8分)となっており、20代・30代の接続時間が、昨年に比べて大きく伸びています(カッコ内は昨年の数値)。またモバイルからのネット接続時間を見ると、男女ともに30代と40代の間に、大きな乖離が見られます(図2)。