広告マーケティング活動にとっての「PR」とは何か。戦略PRやIMC戦略などPR発想におけるコミュニケーション全体戦略の立案について、博報堂の木原龍太郎氏が解説する。
Point1
PR活動は、マスコミ報道やオピニオン、ユーザーによる口コミ情報などの有益な情報をつくりだし、人が能動的に集まる環境を整備する。情報の海流をつくりだし、活用する視点を持つべきである。
Point2
戦略PRは商品/サービスのローンチ時の話題を増幅する手法として位置付けられるが、成長・成熟期にいたる長いスパンでの活用が可能。話題にしてから売るだけでなく、話題を絶やさず、売れ続ける視点にも着目。
Point3
ストーリー性が要求されるIMC戦略を設計する上では、パターンよりもオリジナリティが要求される。プロット発想を活用することが有効であり、(1)フィールド(2)モチベーション(3)エピソード(4)キャストの4要素を押さえる。
検索時代に求められる“判断材料”
10年前にはなく、いま当然のようにある行動。それは「検索」である。社内の打ち合わせや得意先との会議の時でさえ、誰かが新しい言葉を発しようものなら、武士に刀、西部劇ガンマンにコルトガバメントのごとく、スマートフォンを懐から抜き出し、神業級の文字打ちで検索する人がいる。知らないことが許せない!といった風情だ。私のようなアナログ体質の人間からすれば、もはや反射神経の域に達した情報収集活動が周囲で当たり前のように見られるようになった。
街を見渡しても同じである。電車の車内でも、カフェの中でも、二宮金次郎ポーズをとって「検索」活動に勤しんでいる。ここまで来ると、現象ではなく日常である。まさに“速攻検索”時代。必然的にコミュニケーション活動にも、いかにして「検索」させて自社商品/サービスの理解を深めるか、こういう視点が求められる時代になったわけである。
「検索」は、同時に複数の異なる情報に触れさせることでもある。
自社商品/サービスにとって追い風になる情報もあれば、向かい風になる情報もあるはず。生活者は、それらの情報を複眼的に吟味して、頭の中で“次の行動”に移行するか否かを判断する。だからこそ、「有益な判断材料を複数の視点から提供できる環境を整えておく」コミュニケーション回路が重要になってくる。そして“有益な情報環境を整えておく”活動が、本稿のテーマとなるPR活動である。
「検索」行動が生活者の初期動作になりつつある今日、「え?PR?それは広報セクションの業務領域でしょ」という認識を改めなくてはならない状況にあると思う。PRの専門スキルまでは必要ないにせよ広告・マーケティング担当者が“PR発想”を理解し、広告・マーケティング活動に活かしていく意味は非常に大きいはずだ。本稿では、そもそもPR発想とは何か。そして広告・マーケティング活動にどうやってPR発想を活かすべきか、を紐解いて解説していきたい。