
イラスト/蛭子能収
以前にも書いたが、調べものをしに国会図書館の新聞資料室へよく行く。新聞の縮刷版をめくっていて、いつもちょっと気になるのが、小見出しほどのサイズの表札型の広告。ほぼ3行のスペースをとっているから、こういうのも“三行広告”の部類に入るのかもしれないが、どれも商品や会社名、電話番号くらいがぽつんと表示されているだけ。たとえば昭和42年の読売新聞には、「トモエ算盤」「マルコメみそ」「日東紅茶」「象印わたふとん」「お菓子 月ヶ瀬」「トーサンズボン」...記事の中にそんな広告が点在する様は、田舎のローカル線の窓越しに見るホーロー看板のようで、妙な風情を感じる。ちなみに「トーサンズボン」ってのは、手元にある昭和33年の読売新聞縮刷版にもよく見る常連さんで、戦前の人気漫画キャラ・のんきなトーサンらしきマークがあしらわれている。ネットで検索していたら、デイリーポータルZに載った昭和33年頃のやや大型の広告が紹介されていた。街頭をゆく紳士モデルの写真に添えて、「エレガントな細いものが流行しております。ズボンの裾巾も8インチ半で、それ以上は時代遅れといわれています」と、かなり思い切った断定調のコピーがある。トーサンズボン、ますます気になってきた。