テレビより昔からあるため、ラジオは古いメディアのように捉えられるが、
もし今日発明されたものならば、大変なヒット商品になっていただろう。
昔からの大ファンだという箭内氏が、ラジオの魅力とその可能性について熱く語る。
箭内道彦 (やない・みちひこ)
クリエイティブディレクター。「月刊 風とロック(定価0円)」発行人。主な仕事にタワーレコード「NOMUSIC,NO LIFE.」キャンペーン、リクルート「ゼクシィ」、サントリー「ほろよい」などがある。
5人の内の1人の立場で話す
実家の家業がお菓子屋で、店内にはいつもラジオが流れていました。その頃から大好きですね、ラジオ。一度も掛かったことはないけれど、電リク(電話リクエストのこと)やはがきを投稿したり、学生時代にBCL(Broadcasting Listening)でベリカード(受信確認証)も蒐集しました。国内外の放送局に受信報告書を送付すると、その証明として放送局が発行するポストカードのような受信確認証が届いて、「オレ、ローマの放送局から届いたぜ」など学校内で流行しました。深夜放送は、試験勉強しながら、オールナイトニッポンで、タモリさんや中島みゆきさん、松山千春さんの話を聴いていましたね。
その頃は、まさかラジオのパーソナリティをやるとは思っていませんでしたが、2004年にTOKYO FMより誘われ、ラジオ『風とロック』がはじまりました。以来、自由に実験的なことをさせてもらっています。ラジオには「普段通りのテンションで話すと暗く聞こえる」「たくさんの人に話しかけないように」などちょっとしたコツがあります。10年近くパーソナリティを続けた糧でたどり着いたのが「5人ぐらいと話すように話す」こと。1人に対して話すようにすると思いが強すぎて、多くの人に話すようにすると、誰もいないところにボールが落ちたような虚しい感覚に陥ることがある。リスナーからの悩みや心配事の相談を受けた5人の内の1人の立場として話したほうがしっくりきます。