大手企業で先進的なWebマスターとして活躍し、「Web仙人」と慕われてきた増井達巳氏。この10年のオウンドメディアの変遷と、これからの企業サイトや組織のあるべき姿を解説してもらった。
Point1
トリプルメディアを意識して備える時代はすでに過去のもの。企業のコミュニケーション活動において、スタンダードな考え方であるべき。
Point2
オウンドメディアが「メディア」たるためには、生活者のコンテクスト(アクセスする時間・場所・デバイス)に適した形で、埋め込まれることが前提。
Point3
企業サイトは片手間では機能しない。部署を超え、外部のパートナーを活用しながら「統合型Webマスター」としての機能が必要。
トリプルメディア戦略がスタンダードになるまで
社団法人 日本アドバタイザーズ協会 Web広告研究会が、これからのWebマーケティング戦略として、「トリプルメディア、トリプルスクリーン戦略を考える時代」という「Web広告研究会宣言」を発表したのは2010年のこと。この宣言でいう「トリプル」とは、文字通りのスリー・スクリーン、スリー・メディアということではなく、PC以外のデバイスやペイド(マス)以外のメディアを介して、消費者や生活者とコミュニケーションする時代が来ると予表し、企業のコミュニケーション戦略に刺激を与えることが目的だった。
宣言から3年で予想をはるかに上回る急速な環境変化が起こっている。家庭のテレビはデジタル化され、インタラクティブなデバイスへと変化した。さらに、スマートフォンやタブレットの普及ほど、あらゆる調査結果を裏切る急速な伸びを示した例はないだろう。トリプルメディアを意識して備える時代はすでに過去のものであり、企業のコミュニケーション活動を考える上でスタンダードな考え方になっているべきだとも言える。