スマートフォンユーザーの増加とともに、購買行動にも変化が見られるようになった。ここでは、スマホを介した「ネット通販」「店頭での検索行動」「クーポン」に関する調査をもとに、購買を後押しする要因、あるいはブレーキとなる要因について考えてみたい。
スマホ経由のEC購入額は増加
「スマホが普及する以前、2009年の調査では、モバイルによる通販ショッピングは息抜きや暇つぶしとして、単価の安いちょっとしたものを買う行為という意味合いが強かった。それがスマートフォンの登場により通販の利用者・利用額も増え、購買行動の一手段として一般化している」と話すのは、アサツー ディ・ケイでモバイルユーザーの購買行動に関する調査を手掛ける宇賀神貴宏氏(コミュニケーションチャネルプランニング本部 R&Dチーム リサーチディレクター)だ。
2012年の調査では2009年時に比べ、ECの購入額が単価・合計額ともに増加している。実際に品目別に見ると、特に「衣類・靴」「趣味・レジャー用品」「家電」など高価格帯の商品をECで購入する割合が増えている。
また、スマホ購入後のEC利用頻度(図1)は全体の4割超、中でも20代女性では48.2%が「今までよりも頻繁に購入するようになった」と回答している。購入までの比較検討も全体の約4割、最も多い20代男性で45.4%が「商品情報を今までより多く比較検討するようになった」と答えた。
情報武装で主導権は消費者へ
店頭とECの使い分けについては、商材により異なる傾向も見られる。「ショールーミング」というキーワードにも見られるように、スマートフォンでの価格情報などの検索結果が店頭での購入にブレーキをかけるケースも増えている。特にPC・家電では「スマホでの検索結果をもとに、店員と価格交渉する」と答えた割合が47.2%に上った。一方、ファッション・アクセサリーや化粧品・トイレタリーの分野では価格交渉が難しいこともあり、検索時の口コミや評判をもとに「安心して店頭で購入する」というユーザーが6割を超える結果となった。
「スマホによる購買の最も大きな変化は、情報武装によってユーザーが最も強い立場で都合の良い買い物ができるようになったこと。価格交渉しやすいPC・家電はもちろんのこと、価格交渉が発生しない商材の場合もネットで情報や評判が確認される。そこで店員が入る余地は少なくなり、ネット上での情報提供が重要になっている」。