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現代 宣伝・広告の実務

ラストクリック偏重の功罪。「広告効果の可視化」による波紋を考える

橋本大也(データセクション 取締役会長)

経営のなかで唯一、科学のメスが入らずにいた「マーケティング」にも変化の波が起きている。オンラインからはじまった効果の可視化の流れは広告、そしてマーケティング全体にどのような影響を及ぼすのか。

出典:Smart Insights
世界各国のクリックスルー率。購入にいたる消費者の9割はバナー広告をクリックしていないことがわかる。

ラストクリック偏重の功罪

ネットの広告効果には大きく2種類があるといわれる。クリック率や購入率で計測できる直接的な「レスポンス効果」と、認知率やブランドイメージ向上に貢献する「インプレッション効果」だ。ネット広告は、従来型の広告と比較するとレスポンス効果が見えやすいのが特徴である。表示回数とクリック数、そしてコンバージョン(商品購入や会員申し込みなどのアクションをユーザーが行うこと)の回数が、はっきりとログデータに残るからだ。これに対してテレビCMや新聞・雑誌のような従来型の広告は、視聴率や印刷部数は把握できても、実際にどれだけの人がその広告を見たのか、そして興味を持ち購入に至ったのかは、正確に知ることができない。この費用対効果(ROI)のアカウンタビリティ(説明可能であること)の高さこそ、ネット広告の急成長の要因だった。

しかしネット広告にも長い間、大きな弱点があった。ログの解析によって、直接的なレスポンス効果は把握できたが、間接的なインプレッション効果を立証できなかった。データ分析上は、表示されたその場でユーザーにクリックされた広告、コンバージョンに成功した広告しか効果ありと評価されない。商品・サービスの認知を高めることがねらいの広告や、ブランドイメージを高めるための広告は、表示はされるけれどもクリックされることが少ない。レスポンス効果だけで評価するならば、後者は効果がないことになる。この単純な評価方法では、コンバージョンに直結しやすい検索広告やアフィリエイト広告ばかりが高評価になってしまう。

必ずしも広告は、表示したその場での即時コンバージョンを狙うものばかりではない。広告によって商品の存在を広く消費者に知ってもらい、後日に、何らかのアクションをしてもらうことを目的とする広告も多い。家電やクルマや不動産のように、検討期間が長期にわたる商品であれば、その傾向はなお強くなる。また、消費者は最初に見た広告に飛びつくとは限らない。いくつかの広告を見た後に、アクションへつながるケースの方がむしろ自然なはずである。最後に見た広告のクリックだけを評価する“ラストクリック偏重主義”は、洗練されたクリエイティブでブランド力を高める広告、世の中を驚かして話題になる企画力の高い広告を過小評価してしまう。

画期的なアトリビューション分析

近年、ネット広告の環境変化により、従来難しかった間接的なインプレッション効果の測定も可能になってきた。より多くのデータを分析し、正確に広告の効果を把握するために登場したのが「アトリビューション分析」である。その名の通り、コンバージョンに対する各広告の貢献度を算出する方法論だ。

大きな環境変化とは、ユーザーの広告視聴履歴を広範囲に取得できるようになったことだ。まず第三者広告配信方式の普及という業界の変化がある。国内のあらゆるサイトに横断して広告を配信する広告会社・事業社が現れたことだ。これら業者のログデータを見れば、ユーザーを特定する技術(Cookie)で、同じブラウザ、端末を使いWEBサイトを閲覧している同一ユーザーを把握できるようになった(個人名は特定しない)。

以前、サイトのアクセス解析では、ユーザーの同一性を自社のサーバー内でしか知り得なかったのだが、現在は広告出稿先のメディア上であれば特定できる。Googleアナリティクスのようなアクセス解析のトラッキングツール類にも、アトリビューション分析をするための機能が搭載されている。

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