
公開前に映画のヒット度を予測できるとする「ヒット現象の数理モデル」を発表した鳥取大学工学研究科の石井晃教授。ソーシャルメディア上の投稿件数、映画の興行データ、宣伝費などのデータを用いたシミュレーションを繰り返し、この数理モデルを導き出した。
石井教授がヒット予測に興味を持ったのは、高校時代のクラスメイトである吉田就彦氏の著書「ヒット学─コンテンツ・ビジネスに学ぶ6つのヒット法則」を読んだことがきっかけ。「彼の言う法則は数式化できると思い、実際に数式を考え、本人に話したところ意気投合。さらに当時、彼がブログ検索サービス『テクノラティ』を傘下に収めるデジタルガレージ取締役副社長だったことから、日本で当時まだ新しかったブログの書き込み数も加えると、より精度の高いモデルがつくれるのではないか、という話になり共同で研究を始めることになった」という。その研究の成果は共著「大ヒットの方程式ソーシャルメディアのクチコミ効果を数式化する」に記されている。
石井教授は「経済物理学の数式の基になるのは、社会の中で一人の人間がどのような経済行為を行うのかの分析。一人ひとりの動きを追求することで、社会全体の経済の動きが見えてくる」と話す。
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ソーシャルメディア上の口コミも組み込んだシミレーションと聞くと量だけでなく、質も含めての分析をするのかと思うが、石井教授は「大切なのは質よりも量。かつその量の増え方、減り方の“時間的推移”に着目している」と話す。具体的には、ヒットするものほど口コミの量の増減がゆっくりと推移する。つまりは話題が一過性でなく、継続しているとヒットになりやすいということだ。そこから「口コミ量の推移を見ながら広告を打てば、ヒットさせるための効率的な広告投資配分もできる」と石井教授は考えている。また、この数理モデルは映画だけでなく1000円以下の日用品には応用できるという。