これから生まれる新たな都市づくりに向けた動き、オリンピック開催に向けて盛り上がるポジティブなマインド...。この好機をどう活かすか? 独自の視座を持ち、コミュニケーションビジネスの最先端で活躍する実務家5人に招致決定直後のいま考える、未来に向けたアイデアを聞く。
日本のビジョンは何か。
「Touhoku 2020」2020年のオリンピックを東北で。Crazyな話だけどこれからの日本はこれくらいビッグな夢を持ったほうがいい。(July7,2011)
約2年前、こうつぶやいたことがありました。その時はまだ東京が2020年オリンピックの候補都市にあがるとは全く知らなかったので、ただの単純な思いでした。
国にしても企業にしても、そして個人にしても明確な「ビジョン」と「目標」を持つのは非常に大切なことだと思っています。「Tokyo2020」(「Tohoku 2020」ではありませんが)は、明確で具体的なある一つの目標になったことが素晴らしいと思います。
オリンピック選考会で行われたスペイン、トルコ、そして日本各都市のプレゼン。正直言っていい意味で日本のプレゼンには驚かされました。ストーリーがあり、感情もこもっていて、またプレゼンターのキャスティングも上手く、提案も明確に具象化されていました(ただ良くないのは、原発に関するあからさまに誤魔化した答え。それにも驚かされました)。
前回東京でオリンピックが開催された1960年代、当時アメリカはソビエトに科学分野で圧され気味で少し低迷している雰囲気がありました。そんな中、まだ40代のケネディ大統領が現れるのですが、彼の有名なスピーチに「我々は月に行くことを選ぶのだ。(We choose to go to the moon.)」というものがあります。スピーチの中で彼は、アメリカは世界で最も優れた科学、テクノロジーを持った国にならなければいけないと唱えました。「世界最先端の科学大国」「世界一優れた科学も持つ国」というビジョンのもとに、「人類初で月に行く」という目標を掲げたわけです。
オリンピックを日本で開催できるのは大変光栄なことです。「Tokyo 2020」はある一つの目標ですが、「目標」というのは成し遂げた際、終わってしまうもの。それ以前になぜ日本はオリンピックを開催したいのか?その後、日本はどうなるのか?つまり大切なのは「ビジョン」が何かということです。
今後、日本という国、そして多くの日本のブランドは世界を強く意識した「ビジョン」を持ち、明確に提示していくことが非常に重要だと思います。
レイ・イナモト氏 AKQA Chief Creative Officer, Vice President高校からヨーロッパ・スイスに留学。大学はアメリカのミシガン大学で美術とコンピューター・サイエンスを専攻。1996年タナカノリユキのもとで活動開始。1997年からニューヨーク在住。R/GA、Tronic Studioなどを経て、2004年10月、欧米大手デジタル・エージェンシーAKQAにグローバル・クリエイティブ・ディレクターとして入社、現在に至る。 |