IOCがマーケティングに力を入れるようになった現在と1964年当時では、オリンピックに関連した広告・販促キャンペーンの実施可能範囲は全く異なるものの、第1回東京オリンピック時の宣伝アイデアにはユニークなものが多くある。そんな事例を紹介する。
日本時間2013年9月8日午前5時20分、ブエノスアイレスで開かれたIOC総会で、2020年夏季オリンピック・パラリンピックの東京開催が決定した。ほぼ同時刻、東京・代々木ドコモタワービルの向こうに縦長の虹が出た。
2020年まであと7年。オリンピックは日本人に新たな夢を与えた。これから7年間、オリンピックを目標に我々は日々を前進してゆくことができる。オリンピックは、日常の煩雑な出来事を突き抜ける太い、強い線のような支えとなり、目に見える希望になった。本稿では、49年前に行われた東京オリンピックがどのような社会的意味を持ち、企業コミュニケーションがどのように行われたかを振り返り、7年後に向けての活動のヒントを探りたい。
社会開発、生活・価値観変化
オリンピックのインパクト
東京に、新しいホテルが次々と開業した。上は、ホテルニューオータニの広告。
1964年の東京オリンピックは、日本が戦後初めて世界に向けてその存在をアピールする国際的イベントだった。世界から94カ国、約5500人の選手・役員が東京に集まり、史上最大のオリンピックとなった。日本にこれだけ海外から一挙に人々が訪れたのももちろん初めてである。オリンピック投資は1兆800億円に上ったが、会場建設費はわずか164億円であり、その他は高速道路、モノレール、地下鉄さらには東海道新幹線などの新しい交通網の整備と新設に費やされた。東京が、首都らしいインフラを急速に整備するとともに、東海道、全国に拡がる基点としての存在を浮き上がらせた。