これから生まれる新たな都市づくりに向けた動き、オリンピック開催に向けて盛り上がるポジティブなマインド...。この好機をどう活かすか? 独自の視座を持ち、コミュニケーションビジネスの最先端で活躍する実務家5人に招致決定直後のいま考える、未来に向けたアイデアを聞く。
自社の存在意義を再定義する好機
佐藤可士和氏 アートディレクター
さとう・かしわ/博報堂を経て「SAMURAI」設立。国立新美術館のシンボルマークデザイン、ユニクロのグローバルブランド戦略やふじようちえん、カップヌードルミュージアムなどのトータルプロデュースで高い評価を得ている。著書はベストセラー『佐藤可士和の超整理術』ほか。Kashiwasato.com
オリンピック東京開催に向けて、何か行動を起こしたいという思いは、企業も個人も同様であろう。開催決定以来、多くの人が「ボランティアで何か手伝いたい」とか「子どもに見せたいのはもちろん、何らかのかたちで手伝ってオリンピックに参加するという体験をさせたい」など、個人は自分にできることを今から模索し始めている。
オリンピック開催を喜び、そうやって真摯に向き合おうとしている人々に向かって企業がコミュニケーション活動を行おうとするならば、最も大切なのは、オリンピックの大義とその企業の大義とのあいだに何らかの共通性を見いだすことであろう。それがなければ、いくらオリンピックムードを盛り上げ、サポートする姿勢を表明してみても、他の大量の情報に紛れて流され、人々には届かないし、企業活動に対しての理解も得られない。
しかしながら、オリンピックの大義との親和性を持ったコンセプトを明確に設定し、メッセージの核として据えることができれば、その企業や活動に対して社会からの賛同が得られるであろう。認知度、好感度、ブランドロイヤリティが上がり、オリンピックの力を最大限に活かすコミュニケーション活動によって、オリンピックと共に歩み、成長を続ける企業という存在を印象づけられるのではないかと思う。
そのために、今、自分たちはどういう存在意義を持っていて、何を提供していくことに価値を置いているのかという本質に迫り、次の10年、20年に向けてブランドコンセプトや活動領域を再定義していくことにまず着手する必要のある企業も少なくないのではないかと思っている。