今回の東京招致決定の裏には、2016年の招致失敗という過去の教訓がある。前回と今回で、政府やスポンサー、そして一連の招致活動はどのような違いがあったのか。2016年と2020年の2度、招致活動を経験した日本唯一の研究者・相原正道氏が解説する。
2016年の失敗から学んだ“オールジャパン態勢”
56年ぶりの東京開催をもたらした最大の理由は、2016年の五輪招致失敗から学んだことを2020年の五輪招致に活かすことができたからである。招致失敗の原因として挙げられるのは、ロビー活動不足と国内支持率の低さだった。これを反省した東京が、政財官と一体となった体制を構築し、招致活動を推進してきたことが2020年の東京招致成功へと導いた。
各位のプレゼンテーションの評価は、多数のメディアが取り上げられているのでここで触れるまでもなく素晴らしかった。特に、私が着目する点は、安倍首相と猪瀬都知事の質疑応答に対する返答だ。根拠に即した具体的な数字を明確に提示したことが大きい。これは招致委員会関係者のファインプレーと言える。
とりわけ、招致活動の終盤は政府主導で行動していた。こうした行動ができた背景には、2011年6月、衆参両院の全会一致で成立した「スポーツ基本法」という法律が影響している。前回の2016招致活動は、1964年の東京五輪を前に施行された「スポーツ振興法」の時代だった。IOCが最も重視する政府の財政保証も、自民、民主両党の対立から各省庁を巻き込んだ末、大幅に遅れた。