スマートデバイスの浸透は、店頭での消費行動も大きく変えた。社会全体のデジタル化が進む中で、プロモーション領域に求められる変化とは何か。博報堂プロダクツの戦略を聞く。
─クライアントの課題をどう見ているか。
日本市場は人口減少傾向にあり内需は縮小。「モノが売れない」と言われる時代で勝ち残るために、「瞬間的な売上を高める」ことだけでなく、「同時に継続顧客を獲得する」ことがクライアントのニーズとなっている。この課題に応えられる提案力が博報堂プロダクツには問われている。
当社は「こしらえて生きる」を創業の理念とする総合制作事業会社であり、今後もプロとしての「こしらえる力」が大切なことに変わりはない。また、当社の掲げるコア・コンピタンス「顧客化力」は、複数ある顧客との接点「顧客接点」を、確実に購入に繋げていくため「顧客化接点」にする力。プロモーション手法の多様化に伴い、クライアントの抱える課題が高度化、かつ複雑化している中で、より緻密なマーケティング戦略が必要とされているし、それが提案力の向上につながると考えている。
具体的な取り組みとしては、「リアル×デジタル」。幅広い事業領域を網羅し、制作・実施を行ってきた知見とビッグデータから導き出される情報を掛け合わせたソリューション開発に力を入れている。「実際に商品がどんな風に売れるのか」、「お客さまはどんな風に動くのか」...。これまで蓄積してきた知見があるからこそ、ビッグデータの中に埋もれている“埋没知”を発見できると考えている。
─デジタル時代を迎え、プロモーション領域の仕事も大きく変化をしているのでは。
4スクリーン化に対応するデジタル映像やWEB・モバイルコンテンツの企画制作、高品質CG制作の推進など技術的なデジタル対応施策の強化推進がひとつ。さらに前述のビッグデータのように、デジタル化に伴いクライアントは顧客の購買データなど諸々の情報を持ち、何を、どこで、どんな風に、どんな理由で購入に至るかを可視化することができるようになった。しかし、データが膨大で、それをどう活かすかが大きな課題となっている。プロモーションに科学の視点を入れて仮説を立て、データ分析から効果的なプロモーションを展開するためのプラットフォームの提供を始めている。
─今後の展望は。
CM制作、店頭プロモーション、印刷など全13事業本部が専門性を駆使し連携し合い、デジタル化時代のプロモーションを創っていくリーダーの役を担っていく。企業基盤である「こしらえる力」、現場で蓄積した知見・経験「売りのノウハウ」、さらにそこにテクノロジーを組み合わせ、次なる時代のステージの扉を開けたい。
編集部の視点
デジタル化への対応と一口にいっても様々な面がある。プロモーション領域でも変化する消費者への対応、業務自体の効率化への活用、テクノロジーを駆使したマーケティングプロセスの精緻化など様々な局面での対応が求められている。
安藤輝彦氏 博報堂プロダクツ 代表取締役社長あんどう・てるひこ/1971年博報堂入社。2005年から取締役。専務を経て2010年4月より現職。 |