NHK『NEWS WEB』のひとコマ。視聴者のツイートが画面の下に表示され、その内容を番組のアナウンサーがゲストに投げかけることで、双方向のやりとりが実現している。
スマートフォンの普及が急速に進み、各種SNSの利用者数が伸び続けている。これに伴い、いわゆるテレビの“ながら視聴”も、人々の間で浸透しつつある。NHKのSNS活用を統括する筆者が肌で感じてきた、テレビ×SNSの融合の“今”とは。
『あまちゃん』『半沢直樹』......。今期のテレビ番組が、週刊誌やネットで大きな話題になっていることは、改めて言うまでもないだろう。何より視聴率がいい。これまでの“テレビ危機説”なんてなかったことのように盛り上がっている。実際、これだけ数字がいいと、「やはりテレビは番組の中身が良ければいいのだ」、「結局、番組の中身こそが重要だ。ソーシャルメディアによる連携など必要ない」という声すら聞こえてきそうである。
しかし、本当にテレビの危機は去ってしまったのだろうか。ソーシャルメディアの活用はもう必要ないのだろうか。当然ながら、私はそうは思わない。むしろ、これらの好調な番組のつくりは、これまでテレビ局がソーシャルメディアで補完的に行ってきたことを、テレビ本線でも行うことで、成功しているのではないか、と考えている。
『あまちゃん』の成功についてはすでに数多書かれているが、私が指摘したいのは、ナレーション(語り)の役割である。たとえば、5月に放送された第38回の番組最後のナレーションでは、物語がめまぐるしく展開し、主人公・アキが母・春子のデモテープをまさに聴く段になって「残念! 時間切れです。15分って短いですね~」と言ってみせた。普通、ナレーションは、番組の説明や補足をする役割として、時には主人公が知り得ないことをも語ることがあるわけだが、それにしても、番組のナレーションが自らナレーションであるとは明言しないのが、暗黙の了解である。しかし、「あまちゃん」では、15分が短いということを改めて指摘し、ナレーションが自らその存在を露にした。つまり、番組と視聴者が同じ時間を生きているということが確認されたのである。視聴者の生活時間の延長線上に番組の時間がある、いわば、視聴者と番組が「地続き」になったと言えるのではないか。