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著者インタビュー

企業が「ビッグデータ体質」になるための、組織の壁の乗り越え方

大元隆志(『ビッグデータ・アナリティクス時代に日本企業の挑戦』著者)

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「ビッグデータ・アナリティクス時代の日本企業の挑戦『4+1の力』で価値を生み出す知と実践」
著者:大元隆志
価格:1890円(税込)
発行元:翔泳社

「ビッグデータ・アナリティクス時代の~」と銘打った書籍ではあるが、難解な技術や統計の知識を解説する専門書ではない。著者の大元隆志氏は「ソーシャルメディア、スマートデバイス、IoT(インターネット・オブ・シングス/モノのインターネット化)が新たな情報発生装置となり、クラウドにデータが蓄積される。これにより膨大なデータ(ビッグデータ)が流通するようになり、ビジネスのみならず人々の生活や価値観を大きく変え始め、これらを分析しビジネスに活用する必要がでてきた時代なのだという視点、時代観を示したもの」と話す。

具体的には個々の技術を説明するのではなく、上にあげたソーシャル、モバイル、クラウド、ビッグデータ、IoTを総称し「4+1の力」と命名。この力を活用し、企業が価値を生み出していくための方向性を探ったもの。ビッグデータ活用の事例と聞くと、グーグルやアマゾンといった企業名を想像するが、10年以上前からライフログを蓄積し、データ活用の仕組みを整えてきた企業の姿は、現在の日本企業の実態からは離れている。そこで国内企業、しかも歴史ある大企業の取り組み実例を紹介した点に本著の特徴がある。

「日増しにインターネットの重力が強まり、生活者はその重力に引き寄せられ、インターネットの世界に可処分時間とマインドシェアを奪われている。あらゆる企業が今、ソーシャルメディア、スマートデバイスを使って、ネット上での生活者との接触頻度を高める必要性に迫られている」と大元氏。しかしながら縦割り文化、リスクを恐れる日本企業の文化は、新しい挑戦の前に常に壁となって立ちはだかる。実際、大元氏が取材する中でも「ビッグデータ体質」になろうとすると、必ず組織の壁にぶつかる現状が見えてきたという。本書であえて大企業をとりあげたのも、現場が変革の必要性に気づいていても挑戦がしづらい環境にある人たちの姿が、読者に勇気や希望を与えるとの考えがあったからだ。単なるケース紹介というより当事者が何を考え、どう動いたのか。上司の説得方法や、周囲の巻き込み方など、組織を動かす方法にまで触れている点も本著の大きな特徴と言える。

読者対象は社会の変化を感じ会社を変えないといけないと考えるすべての人たち。しかし特にカスタマーと接点を持つ広告・マーケティング部門の人たちの中に気付きを得ながら組織の壁を超えられず、悩みを抱えている人が多いのではないだろうか。

「広告さえ出していれば売上が伸びる時代ではなく、またビッグデータの活用はじめ売上を伸ばす広告以外のマーケティング活動の可能性が見えてきた時代。従来の広告部門にはない仕事が必要と感じながらも、組織の壁を超えられずに苦戦している人も多いのでは」と大元氏。トヨタ自動車、凸版印刷、日本テレビなど大企業の中で「4+1の力」で時代に合わせた変革をしようとする担当者の挑戦は、特に広告・マーケティング部門で働く人たちにとって、現状から一歩を踏み出すきっかけを与えてくれるのではないだろうか。

大元隆志(おおもと・たかし)氏

ITビジネスアナリスト/顧客視点アドバイザー。技術者、経営層、ユーザの3つの包括的な視点で経営とITの融合の未来を分析。業界動向、競合分析を得意とする。

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