広告のメッセージを深掘りすると見えてくる社会の問題 「歴史」というオブラートで包み、新たな視点を読者に与える
『童の神』『八本目の槍』や直木賞受賞作品『塞王の楯』などの作品で人気の歴史小説家、今村翔吾さん。2021年から書店経営も行い、2024年4月には、シェア型書店「ほんまる」もオープンした。「広告はネタの宝庫」として着想を得ることもあると言い、自らも広告を手掛けてみたいと話す今村さんに、広告のクリエイティブに期待することについて聞いた。
私の広告観
「ISSEY MIYAKE」のクリエイティブ・ディレクターを経て、現在はジャンルを超えたさまざまなクリエイションワークに取り組む藤原さん。
同氏が重視してきた、ものづくりにおける「色」の活用可能性とは。
ふじわら・だい
1992年、中央美術学院国画系山水画科(北京)留学。94年、多摩美術大学美術学部デザイン学科卒業後に、三宅デザイン事務所入社。98年、三宅一生とともに「A-POC」プロジェクトをスタートさせる。「A-POC」にて2000年度グッドデザイン大賞、03年度毎日デザイン賞を受賞。06年、ISSEY MIYAKEクリエイティブ・ディレクターに就任(~11年)。08年、DAIFUJIWARA設立。国内外でクリエイション活動を活発に展開する。京都造形芸術大学・多摩美術大学客員教授。
以前、英国の近現代美術館・Tate Modernを訪れた際、Miroslaw Balka氏によるアートインスタレーションに衝撃を受けました。高さ10メートルはあろうかという大きな鉄箱で、内部は真っ暗。奥行きがどこまであるか分からないその箱の中に入って行って、奥の壁にタッチして戻ってくるという非常にシンプルなものです。「光=情報」であると捉えると、このアートインスタレーションにおいては、人々は一切の情報がないなかで、自分の好奇心・欲望を原動力に手探りで箱の中へ向かっていく。そんな状況を久々に目にした気がしたのです。
何の情報もないなかで、その先にある価値を信じて手探りで進んでいく。情報を発信する側から情報を受ける側へ、コミュニケーションがワンウェイだった時代にはよくある光景でしたが、最近ではあまり見られなくなりました。一方的に発信する広告でつくりあげる、イメージという不確かな価値だけにすがっていてはものは売れなくなっていますし、自分たちが持つ価値を相手にもわかるように提示することが必要になっています。こうした状況のなか、私が提案しているのは、情報を発信する側と受け取る側をつなぐものとして、「色」を使えるのではないかということです。
人間は、色を光によって像を結んだものとして視認し、それを情報に置き換えることで意味を理解します。光は情報を与えてくれるものであり、光によって見えるようになるものに色があります。すなわち、色があるところに情報はある。色は情報であり、意味を持ちます。