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クリエイターインタビュー

「コマ撮り映像」は作り手と受け手の共同作業

竹内泰人(コマ撮り映像専門作家)

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毎回、編集部が注目するクリエイターにお話を伺い、人の心をつかむコンテンツの作り手の"今"に迫る本企画。今回は、コマ撮り映像作家の竹内泰人さんを訪ねました。3DCGなどの映像技術が劇的に発展するなか、コマ撮りにこだわる理由とは?

「コマ撮り」とは、静止している物体を少しずつ動かしながら撮影し、まるでそれ自身が連続して動いているかのように見せる撮影技術です。僕がこの手法を知ったのは小学校低学年の頃。NHKで放送していたクレイアニメ「ニャッキ!」や「ジャム・ザ・ハウスネイル」が好きで、そのメイキングシーンを紹介する番組を見て興味を持ったのが最初でした。そして、チェコのアニメーション作家でコマ撮り界の神様、ヤン・シュバンクマイエルの存在を知ったのが、大学に入った頃。クレイアニメ以外のコマ撮りを見たのはそれが初めてで、この手法が持つ大きな可能性を感じ、この道を進む大きなきっかけになりました。

今でこそ中学生や高校生がPCを使って自由自在に映像を作っていますが、僕の場合はPCを買ったのも、個人で映像が作れることを知ったのも大学に入ってからだったんです。専攻した画像設計学科では、プログラミングに加え、視覚心理学・視覚生物学という、人間の目の働きや「見る」ことに関する研究に取り組みました。そこで映像制作の技術を習得し、趣味で映像を作り始めたのです。

初めてコマ撮り映像を制作したのは、大学2年の終わりに映像制作サークルに入ってからのこと。そのサークルは、毎月30分の番組を制作し、CS放送の「スカパー!110」(当時)で放送するという活動をしていて、その中で僕はコマ撮り映像を作っていました。転機となった作品は、大学4年の時に作った『オオカミはブタを食べようと思った。』。いくつかの映像コンペで入賞したり、学生の映像作品をプロの映像監督が審査して優秀作品を紹介するNHKの番組『デジタル・スタジアム』では年間アワードにもノミネートされるなど、高い評価を得ることができました。これをユーチューブに公開したところ徐々に仕事のオファーが来るようになり、そのままフリーランスの映像作家として活動したのち、CM制作会社・キラメキに所属しました。


自主制作コマ撮りムービー「MONKEY DEAD DROP TURN」。

作り手と受け手の共同作業

コマ撮りの道を究めようと思ったのは、「これなら戦える」と感じたから。僕が学生だった当時は、ちょうど3DCGが流行っていたのですが、3DCGは描写する対象物の色・形や質感、動きなどクリエイティブの巧拙がプロと素人との間で歴然としてしまう。大学入学時点で3DCGを全く経験したことのなかった僕が同じ土俵に乗って戦うのは難しいと思いました。でもコマ撮りは、極端に言えば、クリエイティブに多少の"素人っぽさ"があってもそれさえが、一つの「味」になる。表現の技術よりも、アイデアで勝負できるところに、大きな可能性を感じたんです。

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