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著者インタビュー

欧米発の理論の後追いから脱却、ネット時代の新たな意思決定プロセスを提示

慶應義塾大学商学部 清水聰教授(『日本発のマーケティング』著者)

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『日本発のマーケティング』
著者:清水聰
定価:3780円(税込)
発行:千倉書房

世界有数の成熟市場。しかも日本の消費者は商品やサービスの質に対する評価が極めて厳しい。そんな日本がなぜ、マーケティングの理論となると欧米の研究ばかり追いかけてしまうのか...。こうした問題意識から、慶應義塾大学の清水聰氏が新著『日本発のマーケティング』を刊行した。

インターネットが浸透し、消費者の行動は様変わりしている。しかし清水氏は「新しい消費者の意思決定プロセスに合わせたメディアミックスができておらず、それが企業や広告会社にとって大きな課題となっている」と指摘。この問題を解決するためには「インターネット時代に即した消費者行動の理論をつくること、そしてそれを分析するためのデータ環境を整備することが必要」とするが、本書ではそのうち、前者の「インターネット時代に即した消費者の意思決定プロセス」について提案。その可能性について実験データをもとに実証している。

具体的に清水氏が提示した新たな消費者意思決定プロセスとは、「情報循環型意思決定モデル」だ。本モデルの特徴としては、従来までの認知から始まって購買で終わる一方通行のモデルではなく、購買後の情報共有が次の情報検索に影響を与えるという情報の循環を仮定していること。意思決定プロセスが個人の中だけで完結するのではなく、個人から市場全体への影響も仮定していることの大きく2つがあげられる。

「これまでの消費者意思決定プロセスは、一個人の購買までの流れを捉えようと研究が進められてきたが、ネット上の口コミがこれだけ流布し、また多くの消費者がその情報を購買の際に利用するようになると、一個人の購買までの流れを捉えるのでは不十分であり、口コミ派生のメカニズムを加味し、潜在顧客にその口コミが影響する流れも組み込まなければならないと考えた」という。

清水氏は「欧米の理論を日本に持ってきて、それが当てはまる、当てはまらないと議論しているのは、先進国ではない時代の研究方法。先進国と言われて久しいわが国の学会が、未だにそういう形でしか学問の発展を実現できないのは、問題だと思っている。私の専門は消費者行動研究なので、その部分だけでしか、新しい提案はできないが、この本をきっかけに同じような志の研究者が登場してきてほしいと思う」と本書に込めた思いを話している。

清水聰(しみず・あきら)氏

1986年慶應義塾大学商学部卒業。1991年同大学大学院商学研究科博士課程単位取得退学。同年、明治学院大学経済学部商学科専任講師就任。同学科助教授、教授を経て2005年慶應義塾大学博士(商学)、09年慶應義塾大学商学部教授就任、現在に至る。

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