インタラクティブでエンタメ性ある「ゲーム」が広告の可能性を拓いていく
絵画からキャリアを始め、3DCGや現代アートで社会課題に挑むアーティスト、藤嶋咲子さん。「バーチャルデモ」ではSNSの力を可視化し、「WRONG HERO」ではジェンダーバイアスへの問いをゲーム形式で表現するなど、新しいアートの形で人々の抑圧された声を浮かび上がらせている。広告やメディアが抱える課題に対しても、独自の視点を投げかける。
私の広告観
学生時代から年300本以上の作品を観るほど、大の映画好き。父が日活に勤めていたこともあり、それこそ空気を吸うのと同じくらい自然に、映画を観て育ってきました。とは言え、最初から映画プロデューサーを目指していたわけではなく、実はマガジンハウスに就職したかった(笑)。あまりにも映画が好きすぎて、客観的な立場から映画に携わったほうが良いだろうと考えたのです。『BRUTUS』で映画特集ができたら楽しいだろうなという発想です。しかし、マガジンハウスの面接で当時の社長に「君は映画を作ったほうがいいよ」とはっきり言われたことも後押しとなり、最終的には、東宝への入社を決めました。結局、自分が最も時間とお金をかけてきたものを、仕事にすることになったというわけです。
入社後2年間は大阪の映画館に勤務し、3年目に映画の企画セクションへ異動、現在に至ります。企画する時には、「これがヒットするだろう」「これが人々に共感されるだろう」という観点より、「こういう映画が最近ないから、観てみたい」という、"いち映画ファン"としての感覚を大切にしています。一般社会を生きているひとりの人間として、驚いたり、心が動いたり、何だかモヤモヤした感覚が心の中に残るものが、実は一番重要だと思うんです。
『告白』や『悪人』をはじめ、僕が手掛けた作品は、人間の本質に迫るものや、物事を捉える価値観を問うようなものが多いと評されることがあります。もちろん作品の中で描きたい哲学はあるのですが、それがあまりにも前面に出ることがないようにと意識しています。大事なことは、物語にのせて語らなければならない──映画製作を通して、そう教わってきましたから。まず、人を感動させるストーリーがあって、その中にきちんとした哲学や価値観を織り込んでいく。ただ、本当に良いストーリーというのは、そんなことを気にせずとも、自ずと哲学を孕んでいるのではないかとも思っています。