地球環境に配慮したり、社会貢献したりすることを意識した"ソーシャル〟と呼ばれる消費活動が盛んに行われています。「倫理にかなった」「道徳的な」という意味を持つ"エシカル〟というキーワードも、耳にするようになりました。具体的には、環境に配慮した商品や寄付金付き商品を購入する、フェアトレード(適正な価格で作られた開発途上国の原料や製品)のアイテムを買うといった行動は"ソーシャル〟あるいは"エシカル〟な消費とされています。このような選択をする生活者の行動には、どのようなインサイトが潜んでいるのでしょうか。
女性誌編集長と、社会的な課題の解決に取り組んできたクリエイターに、ソーシャル消費の今とこれからを語っていただきました。
エシカルな選択は人として母としてかっこいい
── 昨今、「ソーシャル消費」「ソーシャルデザイン」という言葉をよく聞くようになり、書籍も発行されています。このような「社会を良くしよう」という意識の高まりは、消費者の商品選択行動をどのように変えてきたと考えますか。

今尾 『VERY』は30~40代前半の主婦がターゲットの月刊女性誌です。編集長に就任して5年半ほどになりますが、この間に読者の消費スタイルはずいぶん変わりましたね。
誌面の企画や読者イベントにも、"社会に、環境に良いことを考えよう"という視点が盛り込まれるようになりました。
まず2007年当時に始めたのが、主婦である有名人に、地球の環境や、未来のために始めた日常のちょっとした行動を語っていただく「母ゴコロ エコゴコロ」という連載でした。『VERY』の読者には、母になって母性が芽生え、自然や環境に対する意識が変わったという方がたくさんいます。そんな読者に対して、セレブリティの皆さんに自らの取り組みや価値観を語り掛けてもらおうと始めた連載で、今でも続いています。
『VERY』では、5年以上前からエシカルや環境に関する行動に率先して取り組むオピニオンリーダーがいて、それに共感する読者がいるという状態が続いています。
こうした状況を踏まえ、2010年6月に「エレカ様のえしかるショッピング」という連載を始めました。「おしゃれは大好きだけど、社会的な行動や消費にももちろん関心がある」というキャラクター、"エレカ様"がおすすめするエシカルなアイテムを紹介する企画です。たとえば連載初回にはケイト・スペードのフェアトレードバッグを紹介しました。この頃からエシカルかつおしゃれなアイテムが増えてきて、そうした商品を紹介するようになりました。
エシカルなアイテムへの興味関心は5年前こそ新鮮でしたが、今や消費の一形態となり、読者も「フェアトレード」などの言葉を普通に使ったり、認識しています。