2019年にパーパスを制定したタカラベルモントは、社内への浸透施策を進める中で直面した課題に向き合うべく社内広報に注力をしている。同社が考えるインターナルブランディングの重要性と社内広報の戦略についてに聞いた。
理容室・美容室、歯科・医療クリニックなどの業務用設備機器や化粧品を手がけるタカラベルモントは、創業100周年をひかえた2019年にパーパス「美しい人生を、かなえよう。」を制定。
制定後は、パーパスを社内外へ浸透させるには“見える化”が重要との考えのもと、周年時にはキービジュアルとショートムービーを制作するなど、パーパスの理解を目的とした取り組みを実施した。
また、2023年にはサステナビリティポリシーとして「企業文化のアップデート」「各機能の競争力強化」「新しい資産づくりへの挑戦」を策定。
サステナビリティポリシーとパーパスの関係について広報室マネージャーの石川由紀子氏は、「パーパスは当社にとって一番上にある概念で、タカラベルモントの志です。パーパスを達成するためのミッションを整理したものがサステナビリティポリシーになります」と話す(図1)。
図1 タカラベルモントのパーパス体系

エンゲージメントとの乖離
このようにパーパスの実現に向けた理解・浸透を推進してきた同社だが、取り組みを進める中で課題を感じるようになっていったという。
同社では2年に一度、従業員に対してパーパスへの理解やエンゲージメントを調べるサーベイを実施している。「通常、パーパスが理解され、浸透していくとそれに比例してエンゲージメントも向上していくものだと私は考えています。しかし、調査結果をみると『パーパスへの共感』と『従業員エンゲージメント』に乖離があることが分かりました」と石川氏。
2022年の調査の「パーパスに共感できるか」を聞く質問では、「そう思う」「ややそう思う」の合計が9割を超えており、多くの従業員がパーパスへの共感を示していたという。
一方で、「当社で働くことに誇りを感じているか」というエンゲージメントを問う質問に対しては、「強く同意する」「同意する」「多少同意する」の合計は88.5%と高めの結果が出たが、その2年前に実施した2020年の調査結果と比較するとすべての世代で割合が低下していた。
さらに、「企業文化やイメージに対する期待と現実」に関する質問では、「社会変化に対応できる/革新性がある」という理想の状態に対して、「現状はそうでない」と回答した人が93.0%となった。
これらの結果は、従業員のエンゲージメントが低下していると…