10時間超となったフジテレビの「やり直し会見」。連載「リスク広報最前線」の筆者、リスクマネジメントを専門とする弁護士・浅見隆行氏が、危機管理広報の観点から解説する。
※本記事は会見が行われた2025年1月28日時点で執筆しています
中居正広氏と女性とのトラブルを巡る問題に関し、フジテレビジョン(フジテレビ)は2025年1月27日に2回目の記者会見を開催。午後4時に開始された会見は翌28日午前2時23分まで行われ、10時間を超える前代未聞の会見となりました。
長時間に及ぶ会見に対してSNSでは「かわいそう」「記者のレベルが低い」などフジテレビに同情する声も散見されましたが、全体的には会見の内容に対して否定的な意見・論調が目立ちました。
では、2回目の会見は危機管理広報の観点から何が問題だったのでしょうか。今回は問題点として3つのポイントを取り上げます。
1. 会見を行う目的が不明確だった
2回目の会見が行われた要因は、1月17日の1回目の会見が閉鎖的な方法で行われ、社内外から批判・非難が止まず、株主からも会見をやり直すように求められたうえに、スポンサー離れの動きに歯止めがかからないことだと推察できます。
しかし、①中居氏と被害女性とが示談により守秘義務を負っており、フジテレビはトラブルの詳細を把握していません。また、②1月23日に第三者委員会の設置を決め、詳細の調査を委ねたばかりです。しかも、③1回目の会見では、2023年6月初旬には事実を把握したものの被害女性のプライバシーの保護を尊重して社内調査を行わず、中居氏が出演する番組を終了しなかったことまで社長が説明済みです。
そうすると、あえて2回目の会見をする以上は、フジテレビの信頼を回復できるだけの新たな情報が発信されなければ、「何のために会見をしたのか?」と批判されることは避けられません。
これはフジテレビに限ったことではなく、危機管理広報全般に言えることです。会見やリリースなどでの情報発信の回数を重ねるなら、前回までの情報発信との違いは何か、何の目的で追加の情報発信を行ったのかを説明できることが必要です。
会見では冒頭で、フジテレビ兼フジ・メディア・ホールディングス(HD)の嘉納修治代表取締役会長と港浩一フジテレビ代表取締役社...