新聞や雑誌などのメディアに頻出する企業や商品リリースについて、PRコンサルタントの井上岳久が配信元企業に直接取材。背景にある広報戦略やリリースづくりの実践ノウハウを、じっくり分析・解説します。
企画意図を分かりやすく伝え
既存品との違いを見せる
リリースでパブリシティを獲得
唐突ですが、私は無類のタルタルソース好きです。海老フライではなくタルタルソース目当てで名古屋まで食べに行くこともありますし、タルタルソースの味が変わったために行かなくなった店もあるほどです。
2024年度上期の「日経MJヒット商品番付」に「タルタル」の文字を見つけたのがきっかけで取材したのが、キユーピーの新商品「具だくさんレモンタルタル」です。
消費が落ちる夏の底上げが目的
同社のマーケティング本部調味料戦略部家庭用チームの中村友美さんらがこの商品の開発を始めたのは2021年のこと。タルタルソースはカキフライが旬の秋冬から春にかけての消費が多く、夏に落ちる傾向がありました。
しかしチキン南蛮の全国への広まりや、唐揚げ専門店でトッピングに使われるなど、魚介類だけでなく肉の揚げ物にも合うことが少しずつ認知されるようになっていました。
そこで消費が落ちる夏にもよく食される鶏の唐揚げに合うよう、レモン味のさっぱりしたタルタルをつくろうと思い立ったとのことです。「当初はオレンジをはじめとする他の柑橘系や、いぶりがっこなどを使うことも検討しましたが、やはり最終的にはお客さまが味を想像できて食べてみたいと思う味ということでレモンに辿りつきました」と中村さん。
同社にはすでに2種のタルタルソース製品があるため新商品の必要性を何度も問い直され、なかなか決済に至りませんでしたが、最後は圧倒的に消費量の多い唐揚げに合うことが決め手になりました。
「味でこだわったのは、限界までレモンを入れることです。試作時になかなかレモンの味が出ず、研究開発本部に相談した結果、果汁だけ...