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危機管理広報 失われた信頼を取り戻す

『セクシー田中さん』問題が残した教訓とは? ネット上の議論に対する広報の対応

鶴野充茂(ビーンスター)

原作とその映像化を巡る問題で世間の大きな注目を集めた『セクシー田中さん』は、SNS上の動きを無視できなくなった現代の広報にとって新たな課題を浮き彫りにした。本稿ではこの事例をもとに、今改めて確認すべき広報の在り方と教訓について考えてみたい。


アンケートの声

調査に時間がかかりすぎた。再発防止策も曖昧に見える(39歳女性)
日テレの対応は遅すぎた。しかも反省がうかがえないような文を後から出し、信用を急落させた(51歳男性)

メディアはどう見た?

「セクシー田中さん」報告書に批判殺到の根本原因(東洋経済オンライン、2024年6月6日)

『セクシー田中さん』は、テレビドラマ化にあたって原作漫画の改変を巡るトラブルが発端となり、広範な議論を引き起こした。

脚本家はSNSでドラマの最終話とその前話の脚本を自身が担当しなかった理由として「原作者の要望」を挙げ、「残念ながら急きょ協力という形で携わることとなった」旨を投稿。「ドラマ制作の在り方、脚本家の存在意義について深く考えさせられたこと」「この苦い経験を次へ生かし、これからもがんばっていかねばと自分に言い聞かせていること」なども述べた。

これに対し、原作者は、ドラマ化に際して「原作に忠実に」という条件を提示していたが、制作過程で大幅な改変が行われたと、ブログやSNSで表明した。

その後、原作者が急逝したことで、問題はさらに注目を集めた。この事態の背景には、ドラマ制作側と原作者とのコミュニケーション不足や、原作の意向をどの程度反映すべきかという議論があった。

最終的に、日本テレビと小学館は調査報告書を公表し、再発防止策を提示したものの、問題の根本的な解決には至らず、業界全体での課題として残されている。

『セクシー田中さん』問題を巡る主な動き
2023年
2月~
ドラマ化に向けた交渉後、制作。やり取りの中で小学館は日本テレビに、原作に忠実であることをドラマ化の条件とし、忠実でない場合は加筆修正の可能性を伝える。
10月22日 ドラマ『セクシー田中さん』の放送開始。
12月24日
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