新聞や雑誌などのメディアに頻出する企業や商品リリースについて、PRコンサルタントの井上岳久が配信元企業に直接取材。背景にある広報戦略やリリースづくりの実践ノウハウを、じっくり分析・解説します。
ピンポイントな時事的テーマを
背景と共に訴求することで
メディアの興味を引きつける
昨年辺りから頻繁に聞くようになってきた「カスハラ(カスタマーハラスメント)」という言葉。顧客からの嫌がらせは社会問題となっており、今回は企業向けにカスハラ対策研修の提供を始めたTMJのリリースを取り上げたいと思います。
TMJはセコムのグループ企業で、企業のアウトソーシングを請け負う、当連載では久しぶりのBtoB企業です。同社はコールセンターの運営業務においてカスハラ対応のノウハウを持っており、社内研修機関もありました。
2023年10月に東京都がカスハラ防止対策について有識者による検討部会を設置した頃から、取引先に「御社はどうしていますか?」とカスハラ対策について聞かれることが増え始めたそうです。2024年になると厚労省が企業に対して従業員をカスハラから守る対策を義務付ける検討を開始。さらにANAホールディングスのような大企業が警察への通報を含む対応方針を公表したことで、本格的に問い合わせが増えてきた、と企業価値創造PJ 広報室室長の泉重年さんは説明します。
そこで、先述の社内研修担当者が社外研修を企画・実施する運びとなりました。カスハラ対策というと、顧客に無理難題を言われたときにどう対応するかを考えがちですが、この研修は、管理部門や責任者が「会社としてどう対応するか」を考えるためのものです。
例えばタクシーでは「非効率なルートを回られた」と怒って料金を支払わない乗客もいるそうです。全額は行き過ぎだとしても、もしドライバーの無知やミスで遠回りになり、時間もお金も余計にかかったのであれば責任を追及してもいい気もします。このように、境界線が難しい問題でもあります。
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