人手不足や人的資本経営への取り組みの加速などにより、企業が人材確保に注力する中で「採用広報」に注目が集まっている。採用広報が企業にとって必要な理由や求職者が求める情報の変化など、現代における採用広報を解説する。
Q1 いま、企業が「採用広報」を重要視しているのはなぜですか?
求職者が企業を判断する基準が変化したことにより、企業に関する「より深い情報」「具体的な情報」が求められるようになったため。
「採用広報」とは何か
まず、「採用広報」とは何か?と考えると「企業が求職者に向けて自社について広報することで、求める人材を採用するための活動」といったように定義できるかと思います。自社のことを応募者により深く知ってもらうための様々な活動のことであり、昔から多くの企業が取り組んできたことになります。
求職者が求めている情報の変化
「採用広報」自体は新しいものではありませんが、現在、重要視する企業が増えている傾向があると感じています。それはなぜか。理由はいくつかあるのですが、ひとつはやはり人手不足と言われる時代のなかで、企業が能動的に動かなくては安定的に人材を確保することが難しくなっているという理由が挙げられます。働き方改革や人的資本経営などにより「人を大切にする」という意識が高まる中で、既存の従業員の労働環境を改善し、無理をさせないようにするためにも人材の確保は急務となります。このように見ると、採用は経営にも直結するものだと言えるでしょう。
別の理由としては、企業のビジネスの複雑化も考えられます。例えば、製造業においても、物をつくるだけではなくその先でサービスとして提供するところまで担うといった変化が起こっています。これにより、求職者が実現したいこと、企業に求めるものが特定の業界に限定されることが少なくなりました。そのため、「A社でもB社でもC社でもやりたいことが実現できる…」という状態になった時に、求職者が企業のパーパスや社会貢献活動をはじめとする「その企業が大切にしていること」を判断軸とすることも増えました。このような情報は企業が発信しなくては見えにくいため、この点でも採用広報が重要となっていると考えています。
求職者が求めている情報の変化
また、求職者が求める情報も変化しています。現在、「どんな会社に勤めたいか」という質問に対して「働きやすさ」を優先する条件として提示する求職者が増えています。これらは「やる気がない」「以前よりも緩くなっている」と言われることもありますが、そうではなく、長く健康に働いていくために、ライフワークバランスを真剣に検討している人が増えた結果なのではないかと私は考えています。
Great Place To Work Institute Japan(働きがいのある会社研究所)では、…