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記者の行動原理を読む広報術

公表の遅れはメディアがスクープする動機に 監督官庁の記者クラブにも目配りが必要

松林 薫(ジャーナリスト)

有事において、報道が過熱してきた場合、自社の担当記者の動きだけを見ていると情勢を見誤ることがある、と筆者は指摘する。そこにはどのような記者の行動原理があるのか。広報担当者が知っておきたい、メディアの取材体制について解説する。

小林製薬の紅麹サプリメントを巡る健康被害問題が、再び注目を集めている。厚生労働省が6月28日に、このサプリメントとの関連が疑われる死亡者が、公表されていた5人以外に多数いると明らかにしたからだ。武見敬三厚労相は記者会見し、小林製薬が死亡者数の報告を更新していなかったことに遺憾の意を表明した。

報道が再加熱

厚労省の発表や報道を見る限り、小林製薬側に被害を隠蔽する意図はなかったようだ。おそらく、疑い例の件数をそのまま出すと数が大きくなるため、可能性が高いものに絞り込んだ上で発表したかったのだろう。

しかし、すでに開示姿勢に疑念が広がっていた中でこうした対応をしたことは、失敗と言わざるを得ない。実際、落ち着き始めていた全国紙の報道も一気にヒートアップし、5月の水準に戻ってしまった。

筆者は小林製薬に直接取材したわけではないので、この失策の背景については推測するしかない。ただ、改めて感じたのは、同社の監督官庁に対する感度の鈍さだ。筆者は日本経済新聞社の記者時代、...

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