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広報担当者のためのマーケティング発想入門

データに基づき意思決定をしたい! データサイエンスを活用した広報企画書の書き方

片岡英彦氏(東京片岡英彦事務所)

「広報関連の新たな企画を実現しようとするも、社内で企画書が通らない……」。そんな悩める人のために、広報の企画を実現するポイントを伝授。筆者の実務経験をもとに、企画書作成に必要な視点を整理していきます。

KPI設定、データ収集・分析基礎と実践

広報活動でのデータに基づく意思決定は、今日のビジネス環境においてますます重要になっている。データを活用することで、広報の施策の成果を具体的に評価し、効果的な戦略を立案し、PDCAサイクルを適切に運用することができる。しかし、多くの広報担当者はデータサイエンス(データから有益な洞察を引き出し意思決定に活用していくアプローチ)に不慣れであり、その学習への一歩を踏み出すことに不安を感じているかもしれない。

そこで今回は、データサイエンスの基本的な概念をはじめとして、広報活動に必要なKPI(Key Performance Indicator)の設定、データの収集と分析、効果の検証方法まで、実践的なノウハウを解説していきたい。データサイエンスを適用することで、広報担当者は、施策の成果について自信を持って分析し、継続的な改善を図ることができる。それは経営層に対する説明責任を果たす上でも役に立つ。データサイエンスは、広報活動を次のレベルへと引き上げる鍵となるのだ。

視点1
データサイエンスと広報活動の融合

データサイエンスを広報に応用する

データサイエンスを広報に応用するプロセスは、図1にある3つの主要なステップで構成される。

図1 データサイエンスの応用プロセス

  1. データ収集
    広報活動に関連するデータ、例えばウェブサイトの訪問者数やソーシャルメディアのエンゲージメント、消費者からのフィードバックなどを集める。これらのデータは、戦略の方向性を示すのに役立つ。

  2. データ処理
    収集したデータから不要な情報を削除し、分析しやすい形に整理する。これには、データのクリーニングやフォーマットの調整が含まれる。

  3. データ分析
    統計学や機械学習の技術を用いて、データから洞察を抽出する。これにより広報活動のどの側面がうまく機能しているか、または改善が必要かを理解することができる。

これらのステップを踏むことで、広報担当者はデータに基づいた戦略的な決定を下す能力を身に付け、PDCAサイクルを効果的に運用することが可能になる。

なぜデータサイエンスが重要なのか?

データサイエンスは、統計学、数学、プログラミング、ドメイン知識を組み合わせた学問分野であり、膨大なデータから有益な洞察を引き出し、意思決定を支援する技術である。近年、デジタル化が進む中、企業はこれまでにない速さでデータを生成している。これらのデータを分析し、活用することで、ビジネスの最適化や新しい価値の創造が可能となる。

例えば、筆者がデータサイエンスについて関心を持ち始めた頃、あるリテールチェーンの顧客データを分析するプロジェクトに関わる機会があった。その結果、特定の商品PR活動が特定の時間帯で効果があることが明らかになり、これまでのPR戦略を大幅に見直した。この経験から、データがいかに多くの「見えない物語」(企画側が意図しない「物語」)を持っているかを実感した。

データサイエンスは、単に数値を解析するだけでない。それらが「どのようにビジネスプロセスや顧客の行動に影響を与えるか」を理解し意思決定に利用していく。例えば、ソーシャルメディアのデータから消費者の感情を読み取り、ブランド戦略を練り直すことも可能だ。また、ウェブサイトのトラフィックを分析して、ユーザーがどのページでつまずいているかを特定し、サイトの使い勝手を向上させることもできる。

図2 データ活用の具体例

ソーシャルメディア分析の事例

ある食品メーカーの広報部門が、新商品発売前の消費者の反応を把握するために、ソーシャルメディア上での会話をセンチメント分析(感情分析)した。その結果、ある地域では商品コンセプトに対するポジティブな反応が多いことが判明。広報部門はこのインサイトを活用し、その地域でのPR活動を強化することで、発売後の初期の売上を伸ばすことに成功した。

メディア露出分析の事例

ある大手IT企業の広報部門が、新サービスに関するプレスリリースの効果を測定するために、メディア露出分析を行った。分析の結果、業界専門メディアでの露出が多く、好意的な記事が多いことが分かった。一方で、一般メディアでの露出は少なかった。この結果を受けて、広報部門は一般メディアへのアプローチを強化し、幅広い層への認知度向上を図る戦略を立てた。

イベント効果分析の事例

ある大学の広報部門が、オープンキャンパスの来場者データと、実際の出願者数の関連性を分析した。分析の結果、特定の学部の説明会に参加した学生の出願率が高いことが判明した。広報部門はこのデータを基に、次回のオープンキャンパスで、その学部の説明会を拡充し、潜在的な志願者の取り込みを強化する戦略を立てた。

データサイエンスを活用することで、広報活動には多くのメリットがもたらされる。施策の効果を定量的に測定・評価できるようになり、PDCAサイクルを回すことで、継続的な改善が可能となる。また、データに基づく意思決定は、経営層への説明責任を果たす上でも説得力を持つ。加えて、データから得られる顧客理解は、よりターゲットを絞ったコミュニケーション戦略の立案に役立つ。このように、データサイエンスは、広報活動の精度と効率を高め、戦略的な価値創造に寄与する。

PR戦略にデータサイエンスを実装するためには、プログラミング言語の知識(特にPythonやR)、…

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