複雑化する企業の諸問題に、広報はどう立ち向かうべきか。リスクマネジメントを専門とする弁護士・浅見隆行氏が最新のケーススタディを取り上げて解説する。
いなば食品炎上
いなば食品が静岡勤務の一般職として今春に採用した新入社員19人のうち9割が、社宅の「ボロ家ハラスメント」などを理由に入社を辞退していたことなどが2024年4月10日に週刊文春電子版で報じられると、SNSでは大きな話題になりました。
いなば食品が 4 月12日に自社サイトに掲載したリリースも、内容や見た目が整っていなかったためにより注目を集め、一時はアクセスが集中してサイトを見ることができないほどの反響を呼びました。今回は、このケースを題材に、ネットニュースの報道が先行して大きな反響を招いている場合の危機管理広報のあり方を検証します。
リリースの「タイトル」は適切か
週刊文春電子版や文春オンラインが2024年4月10日に「一般職の新入社員9割が入社拒否」「女帝の “ボロ家ハラスメント”」「給料についても、入社直前になって、募集要項に明記してあった額よりも3万円ほど少ない額を提示された」などと配信した内容は、企業の知名度、社宅の雨漏りする部屋の写真、労働条件の明示義務違反のおそれなどが相まって、SNSで大きな話題となりました。いなば食品を批判する声のほか、面白おかしく茶化す投稿も目立ちました。
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