従業員と組織をつなぎ「翻訳機能」を担う社内コミュニケーション担当者。昨今、注目の集まる「エンゲージメント調査」を契機とした、つながりの創出、対話の場づくりが、エンゲージメントの底上げにつながる。
コーポレートガバナンスの強化、ステークホルダーとの対話、そして人的資本情報の開示。こうした文脈において昨今、組織の非財務指標として用いられ、以前にも増して注目されている概念が“従業員エンゲージメント”です。
まず、従業員エンゲージメントが高い組織は従業員満足度が高い組織と違うのか、という古典的ともいえる問いからはじめて、従業員エンゲージメントの有用性を解説していきます。
従業員エンゲージメントの概念
「満足度」は、従業員一人ひとりが自分の仕事や上司、職場、会社について、自己のものさしで評価をするものです。対して「従業員エンゲージメント」のものさしは、“会社がこれから向かっていく方向”や“会社が社会で果たすべき使命”です。つまり、従業員が「自分自身はどれほどその方向性や使命を理解、共感、支持できているのか」「自分はそうした組織の一員でいることに誇りや意義を感じられるのか」、そして「その目標や使命の達成のために貢献しようという自発的な意欲を持って行動できるのか」を自問自答するものです。
2000年頃、当時ゼネラル・エレクトリックの会長であったジャック・ウェルチが「これからは会社と志を同じくし、そのために行動する意欲のあるエンゲージメントの高い従業員こそが、企業の差別化要因となる」と発表してから、“エンゲージメント”という言葉が広く知れ渡ったと言われています。今の従業員の意識と将来の企業成長の関係に強く相関するものは何か、という調査研究の結果から生まれたものが「従業員エンゲージメント」という考え方なのです。
持続可能なエンゲージメント
リーマンショックなどを経て検証されていったのが、個人の理解ややる気といった“個人のエンゲージメント”に加え、それを成果に結びつけるための“環境”とやる気を長続きさせるための心身の“活力”の重要性です。その結果、“個人のエンゲージメント”(Engagement)、“成果を実現できる環境”(Enablement)、“活力”(Energy)の3要素が高い組織は、1年後と3年後の業績成長がそれぞれ高くなると実証されました。Willis Towers Watson (以下、WTW)では、この3要素からなる概念を“持続可能なエンゲージメント”と称しています(図1参照)。「会社による従業員・組織への投資を従業員がどのように受け止めているのか」「人的資本に対する...