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実践!プレスリリース道場

ニュース配信サイト用リリースのコツ「プレゼン資料」と捉え要点を効果的に訴求

井上岳久(井上戦略PRコンサルティング事務所・代表)

新聞や雑誌などのメディアに頻出する企業や商品リリースについて、PRコンサルタントの井上岳久が配信元企業に直接取材。背景にある広報戦略やリリースづくりの実践ノウハウを、じっくり分析・解説します。

2023年6月、月刊『経済広報』(経済広報センター)で「最近の広報を取り巻く環境変化とそれを踏まえての広報パーソンの在り方」と題した記事を執筆したところ、大きな反響がありました。なかでもニュース配信サイト用リリースに関して「具体的に知りたい」という問い合わせが多かったので、取り上げたいと思います。

ニュース配信サイトとは、プレスリリースの配信代行企業が、メディアへの配信と同時にプレスリリースを掲載するサイトのことで、「アットプレス」(ソーシャルワイヤー)や「PR TIMES」(PR TIMES)、「共同通信PRワイヤー」(共同通信PRワイヤー)などがあります。各社フォーマットが決まっているため、自社配信リリースのようなレイアウトの自由さはありません。

今回取り上げるのは、主に海外のガジェットを日本で販売するGloture(以下、グローチャー)の中国製ヘルメット「GeeMet(以下、ジーメット)」のリリースです。

ヘルメットの販売を提案したのは同社のCIOで広報も担当する駒ヶ嶺正典さん。同社では様々な立場の社員が日常的に話し合えるチャットがあり、気になる商材があるとそこに投稿するそうです。駒ヶ嶺さんは道路交通法により自転車でのヘルメット装着が努力義務となる4月が商機と捉えて提案。

そしてまず考えたのは、装着を好まない人からみたデメリットでした。最大の問題点は、自転車を降りた際に荷物が増えることであり、折りたたんでコンパクトにできる商品のニーズが見込まれました。他にも安全性について十分に認証がなされていることや夜間走行時に点灯できることなどが決め手となり、ジーメットに決定。「導入を検討する時は、ひたすらユーザーの気持ちを妄想します」と駒ヶ嶺さん。

提案したのは3月下旬。約1週間で現地調達部員が商品のリサーチを行い、社内で選定・決定するという、かなりスピード感のある展開です。メーカーからの情報を受けてデザイナーが自社サイトの商品ページを制作。同社では商品ページを重視しており、メーカーの仕様書や既存画像では説明が不十分だと感じた場合、内容の再構築や新たに撮影することもあるといいます。そうすると、リリースはレイアウトを微調整する程度で済むそうです。

配信&掲載は発売日に

こうして4月14日のジーメット発売と同時に、ニュース配信サイトでリリースを配信&掲載しました。発売日に配信すると、直後から掲載や他メディアへの転載があり、注文が舞い込む可能性があるそうで、発売前に出す紙のリリースと大きく異なるところです。

ではそのリリースを見てみましょう。繰り返しになりますが、ニュース配信サイトへの掲載を前提につくられたリリースなので、当連載で紹介しているリリースとはだいぶ形態が異なります。

(ポイント1)まず、冒頭のタイトルやリードは必要最小限の情報に絞っています。紙のリリースでも情報の取捨選択は必要ですが、ニュース配信サイトはフォーマットが決まっているため、より情報を絞り、シンプルにまとめる必要があります。自社サイトにリンクを張れる分、詳細はサイトを見てもらう前提というのも、紙のリリースとは感覚が大きく異なるところです。

「GeeMet」販売開始リリース

情報を絞りながらも、いちばん大事な「4月1日から道路交通法が変わった」という商品の導入理由や社会的背景は外すことなく盛り込んでいます。

(ポイント2)本文はビジュアルを...

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