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実践!プレスリリース道場

面白さと社会性、両方の切り口から話題性を提供 銚子電気鉄道のリリース

井上岳久(井上戦略PRコンサルティング事務所・代表)

新聞や雑誌などのメディアに頻出する企業や商品リリースについて、PRコンサルタントの井上岳久が配信元企業に直接取材。背景にある広報戦略やリリースづくりの実践ノウハウを、じっくり分析・解説します。

銚子電気鉄道(以下、銚子電鉄)の名前はメディアで耳にしたことのある方が多いと思います。

経営難のため、鉄道会社ながら収入の8割は「ぬれ煎餅」の販売であるなど、時に自虐も交えたユニークな広報戦略でテレビにもよく取り上げられています。

この銚子電鉄で、ぬれ煎餅に続く第二の商材に成長したのがスナック菓子の「まずい棒」シリーズ。味はおいしいけれど「経営状況がまずい」という意味のネーミングで、2018年に第1弾を発売しました。

当初は文筆家の寺井広樹氏が企画した「お化け屋敷電車」の乗客への冥土の土産(参加賞)として考案されましたが、一般販売したほうがよいのではないかということで、まず5000本を製造・販売。ホラー漫画家の日野日出志氏デザインのパッケージも人気を呼び、これまでに400万本を販売する大ヒット商品になっています。

そして2021年に、初のコラボ商品として岩下食品と企画したのが、シリーズ第7弾「激しく辛(つら)いまずい棒 岩下の新生姜味」。これは銚子電鉄代表取締役社長の竹本勝紀氏と岩下食品の代表取締役社長の岩下和了氏が懇談した際に意気投合して生まれたもの。

岩下食品もユニークな取り組みをしている企業なので、まずい棒で経営を救いたいというコンセプトに共感し、話はスムーズに進んだといいます。

リリースをつくったのは同社の常務取締役と広報を兼任する柏木亮さんで、企画の開発段階から携わっています。コロナ禍で会社が厳しい状態だったこともあり、「激しく辛いまずい棒」というフレーズを入れたいと竹本社長が希望。「からい」ではないと主張するため、パッケージに「つらい」という吹き出しを付けたのは柏木さんのアイデアです。パッケージは岩下の新生姜と桜を思わせるピンク色。

「売れるにはストーリーが必要だといいますが、若い世代にはやはりキャッチーな見た目なんですよね。ストーリーに惹かれるのは中年以上の世代です」と話す柏木さんは、もともと旅行会社でツアーを企画してメディアに取り上げてもらう仕事をしていたため、マーケティングの知識も豊富なのです。

では、そのリリースを見ていきましょう。(ポイント1) まずタイトルとメインビジュアルがパッと目に飛び込んできて、内容を瞬時に伝えています。これは柏木さんが言う“キャッチーな見た目”に目が引き寄せられるパターンです。商品写真を据えることが多いメインビジュアルも、つくり込んだポスター画像などの方がインパクトを与えられる場合もあります。まずい棒は形状が細く、パッケージの表現部分が限られるのでなおさらです。

(左)「激しく辛いまずい棒 岩下の新生姜味」販売開始リリース
(右)『電車を止めるな!』動画配信開始リリース

(ポイント2) タイトル上にはタイアップ企業名の「岩下食品」を大きく載せて目立たせています。コラボをするメリットは、相手方の著名性と連動することなので、それをリリース上でも最大限に活用しています。

(ポイント3) そして特筆すべきは、A4サイズ1枚で完結している点です。「なるべく1枚でまとめる」というのはリリースの基本ですが、1枚目に最低限の情報をまとめていったん完結させ、2~3枚目に詳細情報を載せるパターンが大多数。これは情報をそぎ落として1枚にした潔いリリースです。

その秘訣を聞くと、「SNSも担当していて、Twitterだと140文字以内にまとめるので、それで鍛えられたのでは...

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