企業が対外的に掲げることが増えたサステナビリティ施策。しかしその実現には、社内に組織風土として浸透させる必要もある。どのような施策を行えば、従業員一人ひとりが自分ゴトと捉え、業務に落とし込む体制ができるのだろうか。
ポーラは、2029年に迎える創業100周年に向け、誰もが美しく生きることのできる社会の実現を目指す「2029年ビジョン」を発表した。具体的な数値目標を定めた「サステナビリティ方針」をかみ砕いたもので、企業の在り方を世に示す意思表示といえる。ビジョンの発表により、社外へのアピールに加え、「SDGs」や「ESG」といった難解なワードを理解しやすくし、社内浸透を図っている。
社内風土を明文化
「サステナビリティ方針」は、項目を社会・経済・環境の3つに分類し、それぞれの数値目標を明示したもの。
「そもそもポーラには、社会や人のことを思いながら仕事に取り組む従業員が多くいます。利他精神が強い風土が浸透していますが、その精神を明文化したものはありませんでした。そこで100周年という節目に、改めて当社が取り組むべき課題をポーラの『サステナビリティ方針』としてまとめ上げました」(ポーラ サステナビリティ推進室室長 佐藤幸子氏)。
目指すべきゴールが鮮明に見えている具体的な方針だが、その内容はこれまで地道に取り組んできたサステナビリティに関する社内への浸透施策の延長線上にある。
ルーツは、2016年に発表された「POLA Dots」というビジュアルアイデンティティ。創業者の鈴木忍氏が「妻をいたわるために独学でハンドクリームをつくり始めた」という逸話に通じる、慈しみの精神を表している。これを起点に組織風土やマネジメント改革にまでつながったのだ。
「組織の風通しを良くするために、2016年から管理職に対して年4回の研修の実施や、組織サーベイを通じて組織風土チェックを行ってきました。また、ポーラは全国にたくさんの店舗があるのですが、役員や取締役などが役割分担しつつ、対話と振り返りを重ねて少しずつ社内が良い方向に変わってきた実感があります。そして、こうした組織風土やマネジメント改革の延長に明文化した新方針を打ち出しました」(佐藤氏)。
共感できるスローガンの策定
ただ方針の大枠については「SDGs」や「ESG経営」といったワードの硬さもあり、従業員に腹落ちさせるのが難しいという問題があった。どれも重要なことながら...