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リスク広報最前線

否定的な報道後、株主・投資家に安心感を与えるには

浅見隆行

複雑化する企業の諸問題に、広報はどう立ち向かうべきか。リスクマネジメントを専門とする弁護士・浅見隆行氏が最新のケーススタディを取り上げて解説する。

問題の経緯

2023年1月9日

否定的な報道や迷惑動画などで、株価が続落。こうした事態に対する危機管理広報では、感情的にならず、信頼の回復や不安の払拭に適した言葉を選択していく必要がある。

©123RF

共同通信は1月9日、障害者の雇用を支援する農園サービスについて、障害者の法定雇用率を形式上満たすための「雇用を事実上代行」するものとし、「国会も問題視している」などと否定的に報じた。子会社が貸農園事業をしているエスプールは、報道後の10日には株価がストップ安に。11日、「(報道は)事業の実態から大きく乖離した内容」と反論するリリースを出した。


1月9日、共同通信が、障害者雇用に関わる貸農園事業について否定的な報道をしました。その結果、10日と11日、子会社で同事業を展開しているエスプールの株価が大幅に下落。これに対し、エスプールは11日の取引時間終了後に反論のリリースを公表し、株価は上昇しました。

今回は、このケースを題材に、事業内容に否定的な報道がされた後の危機管理広報について検討します。

ESG貢献についてもアピール

現在、一定数以上の従業員を雇用している企業は、法律が定めた割合以上に障害者を雇用することが法律上義務づけられています(障害者雇用率制度といいます)。そこで、障害者雇用率を確保するために、障害者を雇用し農園事業に従事させている企業もあるようです。エスプールの子会社が行っていたのは、この農園を貸し出す事業でした。

共同通信は、この事業に関して、「就労を希望する障害者も紹介して雇用を事実上代行するビジネス」「違法ではないが『障害者の法定雇用率を形式上満たすためで、雇用や労働とは言えない』との指摘が相次ぎ、国会も問題視。厚労省は対応策を打ち出す方針」などと否定的な報道をしたのです。

国会や厚労省の対応次第では、今後、同事業の展開が厳しくなる可能性がある、と読み取れる内容でした。株主・投資家が今後の事業展開を不安視した影響か、6日金曜には終値827円だった株価が、報道翌日の10日には終値677円、11日には終値638円と続落したのです。

今後の事業展開に関して否定的な未確定情報が報道され、それによって株価が続落する事態は、企業にとっては突然の風評被害であり危機です。この危機を乗り越えるためには、事業の今後の展望を示し、株主・投資家に安心感を与えることが必要です。

果たして、エスプールは、11日の取引時間終了後に「当該報道機関の一方的な意見に偏ったもの」として、反論を公表しました。主な内容は、①障害者雇用と農業との親和性の高さ、②障害者雇用率制度と子会社が行っている...

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