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大学広報ゼミナール

公共性の高い「大学広報」 「バズる動画」のその前に

鈴木洋文(高崎商科大学)

連載をスタートするにあたり、大学広報担当者として、どのような立場から読者の皆さんに進言するのか、まずはお話したいと思います。

「大学マーケター」の経験則

1999年、私は群馬県高崎市にある高崎商科大学(以下、本学)の前身である高崎商科短期大学に広報担当者として入職しました。それまでは広報やマーケティングに関係する仕事はしておらず、教育畑にいたわけでもなかったため、それは、業種も職種もまったく経験値のない、0からの広報人生のスタートでもありました。

心理学・教育学をベースに、人を育てることについて“科学”した名著『企業内人材育成入門 人を育てる心理・教育学の基本理論を学ぶ』(中原淳編著ダイヤモンド社)によると、多くの子どもの学習は「何を、いつ、どのように学ぶか」を教師が決めるのに対し、大人は、仕事で生じた問題を解決したいときや自分に与えられた役割を全うしようと思うとき、重い腰を上げ、「学習のレディネス(準備状態)」を獲得するとあります。また、実利的で即効性を求めるとの解説もあります。

私が広報やマーケティングを学んできたのも、まさに役割を全うするため、少子化が進む中での大学の生存競争に立ち向かうためであり、必然性があったからと言えます。

私の広報キャリアは、すでに20年ほどになります。マーケティングの書籍も読みますが、研究に活かすことが目的ではなく、実践知を身に付け、磨き、大学の未来に寄与することが私の使命だと思っています。研究者でもなく、マーケターでもない。言ってみれば、『大学マーケター』としての狭い領域が専門なのかもしれません。そのような立場で自身の経験則から進言いたします。

受け手側の満足を第一に

ときに“数字”や“図表”などのエビデンスは、納得感や説得力を高める効果があります。私の広報業務には、一般的な広報業務も含まれますが、エビデンスにより、評価が明確に出やすい学生募集(入試広報)に関する成果も示すことがあります(図1)。

図1 過去10年間の志願者数の推移
高崎商科大学では、平成25年度には270名だった志願者が令和4年度には3倍をこえる919名に。

学生募集における成功は、もちろん、私一人で成し遂げられることではありませんが、募集活動の最前線で戦ってきたことは間違いありません。

さて、第1回となる今回は、テーマを「大学広報の目的とは何か」としました。ここまでの流れで行くと、その目的は「学生募集の成功」ということになりそうですが、皆さんと一緒に考えを深めていきたいと思います。

皆さんもネット広告やテレビCM、新聞や雑誌広告などで、たくさんのクリエイティブ類を目にする...

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