危機対応をはじめ、高い倫理観が求められる広報部門。ときに内向きな組織の姿勢を牽制することもあります。倫理的に望ましい判断をどのように導けばいいのか。今回は役割責任について考えます。
一般に人のふるまいや性格が善いとか正しいとか言うとき、私たちは、その人が社会や特定の集団においてどのような役割を担っているかはあまり気にしていません。何も条件を付けずに道徳や倫理について語るとき、私たちは、その人がその人として倫理的であるかどうかを判断していることになります。
他方で私たちは、それぞれに社会的役割を担っています。そしてそれに応じて異なる倫理的責任を担っていると言えます。例えば私が親であるなら、親としての責任を担っています。親でない人は、親としての責任は担いません。このように、役割に応じて担う責任を役割責任と言います。役割責任は、特定の役割を引き受けているがゆえに生じる責任だということになります。
専門職と役割責任
例えば、いわゆる新型コロナウイルスの発生以来、医療専門職の人たちがどれだけ強い気持ちで職責を果たそうとし、また今もなおそうし続けているかを私たちはよく知っています。私は彼らの責任感と勇気に対して、深い感謝の気持ちと敬意を抱いています。
専門職とは、専門的な知識と技能を備えた職業、またはその職業に就く人のことを言います。そして専門職が役割として担う責任は、専門職ではない職業に求められる責任とは異なっているように見えます。専門職が社会的に不適切であるとみなされる行為をしたとき、そうではない人が同じことを...